高齢の親が複数の病院にかかって入院や通院をしていると、医療費の負担が重くなることがあります。その際、負担を軽減できる仕組みのひとつが「高額療養費制度」です。今回は、年金収入が260万円ほどある80歳以上の高齢者が月に医療費を4万円以上支払っているケースを例に、還付される可能性やその条件について詳しく解説します。
高額療養費制度とは?
高額療養費制度とは、1ヶ月に支払った医療費(自己負担額)が、所得に応じて決められた上限額を超えた場合、その超えた分が払い戻される制度です。対象は1ヶ月単位・1人あたり・同じ健康保険内の医療費です。
この制度は70歳以上の場合、医療費の自己負担割合が1割または2割の人も対象になっており、年齢に関係なく還付を受けられる可能性があります。
80歳以上・年金収入260万円の高齢者が該当する所得区分
70歳以上の方の所得区分は「課税所得」で判定されます。課税所得は、年金収入から公的年金等控除や基礎控除を差し引いた後の金額です。
年金収入が260万円程度の場合、控除後の課税所得はほとんどないか、あっても軽度となるため、「一般所得者(区分Ⅱ)」または「低所得者Ⅱ」に該当することが多くなります。
月ごとの自己負担限度額の目安(2024年現在)
所得区分 | 自己負担限度額(月額) |
---|---|
一般(区分Ⅱ) | 18,000円(外来上限) 57,600円(入院+外来) |
低所得者Ⅱ | 8,000円(外来上限) 24,600円(入院+外来) |
仮に区分Ⅱに該当し、1ヶ月に複数の病院で合計50,000円以上の支払いがあれば、18,000円〜57,600円を超えた分が後日払い戻しされる可能性があります。
還付されるための条件と申請のポイント
高額療養費の還付を受けるには、次の条件を満たしている必要があります。
- 同一月内(1日〜末日)に支払った自己負担額の合計が限度額を超えている
- 1つの医療機関あたり21,000円以上の支払いが複数ある(複数病院の合算条件)
- 健康保険組合または国保への申請(もしくは自動処理)
多くの場合は、医療機関の請求から約3カ月後に保険者から通知があり、自動的に払い戻しされることもあります。ただし、国保や一部の健保では申請が必要なケースもあるため、加入先の保険者に確認しましょう。
実例:還付されるケースの計算
仮に、80歳の方が1ヶ月に以下の医療費を支払ったとします。
- 病院A:外来 25,000円
- 病院B:入院 28,000円
- 病院C:外来 12,000円
合計:65,000円
この方が「一般所得者(区分Ⅱ)」であれば、自己負担限度額は57,600円ですので、超過分の7,400円が還付対象になります。
まとめ
高齢者であっても、年金収入260万円程度であれば高額療養費制度の恩恵を受けられる可能性があります。特に80歳以上で複数の医療機関にかかっている場合、月に4万円以上支払っているなら、一度還付の可能性を確認する価値は大いにあります。
支給区分や手続き方法については、お住まいの市区町村の国民健康保険窓口や、健康保険組合に直接問い合わせてみましょう。
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