離婚した前妻に年金を取られる?年金分割制度とその影響をわかりやすく解説

年金

年金は老後の重要な生活資金ですが、離婚歴がある配偶者がいる場合、思わぬところで年金額に影響が出ることがあります。特に複数回離婚しているケースでは「年金分割」によって、元配偶者に年金が分けられてしまうことがあるため、現配偶者や子どもを抱える家庭では将来の家計に不安を感じる方も多いでしょう。本記事では、離婚と年金の関係、前妻への分割の仕組み、そして分割を回避・軽減できる可能性について解説します。

年金分割制度とは?離婚後の取り決め

年金分割制度は、2007年4月に導入された制度で、婚姻期間中の厚生年金保険(報酬比例部分)を夫婦で分け合う仕組みです。これは専業主婦(夫)やパートで働くなど収入差の大きい配偶者にも、離婚後に年金が支給されるようにするための制度です。

離婚時の取り決めに基づいて年金の分割割合(通常は最大50%)が決まり、当事者が申請することで将来の年金受給に反映されます。分割されるのは将来支給される額の一部であり、年金記録自体が改められます。

前妻への年金分割は自動では行われない

意外と知られていないのが、年金分割は離婚すれば自動的に行われるわけではないという点です。分割を受けるためには、前妻が「年金分割の請求手続き」を行う必要があります。しかも、その請求には離婚後2年以内という期限があります。

もし前妻がこの請求をしていなければ、たとえ婚姻期間が長くても年金分割は実行されません。また、夫側が納得しなければ調停・裁判で争われることになります。

たとえば、1人目の前妻が離婚後すぐに年金分割を請求していれば、その分はすでに確定しているはずですが、2人目の前妻が請求していない場合は分割されない可能性もあります。

分割される年金の種類とその上限

分割の対象となるのは厚生年金のうち「報酬比例部分」のみです。国民年金部分(基礎年金)は分割の対象ではなく、年金全体のごく一部だけが対象です。

さらに、分割される割合は最大で50%までとなっており、それを超えることはできません。また、複数の前妻がそれぞれ分割を受けたとしても、重複して全体が100%以上になることはありません。

例として、夫が婚姻期間10年の前妻Aと5年の前妻Bと離婚していた場合、それぞれの婚姻期間中に相当する厚生年金分が最大50%ずつ分割の対象になりますが、実際の受取額はそれぞれの請求状況と婚姻期間に基づいて計算されます。

前妻に分割を放棄してもらう方法はあるのか?

基本的に年金分割の請求は法律上の権利であり、請求を「やめさせる」ことはできません。ただし、前妻本人が請求をしなければ分割は発生しません。また、協議離婚の場合、当事者間で合意のうえ「分割しない」旨の取り決めを調停に記録することも可能です。

すでに離婚が成立している場合でも、前妻に請求をやめてもらうよう話し合うことは可能ですが、法的に強制力のある方法ではありません。特に前妻との関係が悪い場合や、子どもがいる場合は請求されるケースが多いため、現実的には分割される前提で生活設計を立てることが望ましいです。

子育て中の現配偶者が知っておきたい支援制度

年金の減額が見込まれる場合でも、現配偶者が安心して暮らすための支援制度は各種存在します。

  • 児童扶養手当や就学援助
  • 住宅手当や医療費助成制度
  • 低所得世帯向けの年金生活者支援給付金

これらは所得や家庭状況に応じて利用できるため、必要に応じて市区町村の窓口で相談するとよいでしょう。

また、夫が身体的な事情で働けない場合、障害年金の対象となる可能性もあるため、年金事務所で相談してみる価値があります。

まとめ:年金分割は仕組みを理解し、事前に備えることが大切

離婚歴がある夫の場合、前妻による年金分割の可能性はゼロではありませんが、それには前妻の申請が必要であり、自動的に「取られる」わけではありません。婚姻期間や分割の上限など、制度上のルールを理解しておくことで、過度な不安を避けられます。

また、収入減が想定される将来に備えて、各種公的支援制度の情報を集め、家族でできる対策を早めに考えておくことが、安定した生活を送るためのポイントです。

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