療養期間中の従前標準報酬月額のみなし措置は、病気やけがで働く時間が短くなり収入が減ってしまう場合に、その収入減を補うための仕組みとして活用されることがあります。特に社会保険に加入している会社員にとっては、生活の安定を図る重要な制度のひとつです。
従前標準報酬月額のみなし措置とは?
この制度は、病気やけがなどで療養中に時短勤務などを行った結果、報酬が減ったとしても、保険料算定の基準となる「標準報酬月額」を従前の額で据え置くことで、将来の給付額や社会保険料に影響を与えにくくする制度です。
言い換えれば、「実際の給与が減っても、保険制度上では以前の収入水準をベースに計算するよ」という救済措置です。これにより、傷病手当金などの給付額が減らないように配慮されています。
メリット:将来の給付額が減らない
① 傷病手当金などの給付額が据え置かれる
標準報酬月額が低くなってしまうと、傷病手当金や出産手当金などの給付金額にも影響が出ますが、みなし措置によりこれを防ぐことができます。
② 年金額にも影響が出にくい
将来的な厚生年金の受給額は、現役時代の標準報酬月額によって決まります。報酬減による年金額低下を防げるのもメリットのひとつです。
デメリット:社会保険料は従前の金額のまま
① 実収入が減っても保険料はそのまま
標準報酬月額が下がらないということは、逆に言えば保険料も従前の水準のまま支払う必要があります。結果として手取り額がさらに減る可能性もあります。
② 会社側の負担も変わらず
企業も保険料を半分負担しているため、長期的な時短勤務が続くと会社側にも負担がかかり、制度の利用継続に影響が出ることも考えられます。
利用できる条件と申請の手続き
この措置を利用するには、労働時間の短縮や報酬の減額が確認できる資料(勤務表・給与明細など)を添えて、事業所経由で申請する必要があります。健康保険組合や協会けんぽにより、多少の違いはあるため、必ず自分の加入している保険機関で確認しましょう。
また、通常は一定期間(例えば3か月)経過後に標準報酬月額が見直されることになりますが、この措置を活用することで、それを回避できます。
実際の活用事例
たとえば、手術後に週3日勤務に切り替えた30代の会社員Aさんは、給与が大幅に減ったにもかかわらず、みなし措置を活用することで傷病手当金の満額受給が可能となりました。ただし、手取り額は保険料の維持でさらに減少していたため、家計の見直しも並行して行いました。
まとめ:みなし措置は一長一短、使い方次第で大きな味方に
従前標準報酬月額のみなし措置は、療養中の金銭的な不安を和らげてくれる心強い制度です。ただし、実際の収入が減っても保険料は減らないというデメリットもあるため、状況に応じて利用の判断をする必要があります。
申請には会社の協力も必要となるため、まずは職場の総務や人事担当者と相談のうえ、健康保険組合に確認するのが第一歩です。
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