台風や線状降水帯、集中豪雨による浸水被害が気になる場合、「水害専用の保険を探す」というより、一般的には火災保険に水災補償を付けて備えることになります。火災保険という名称でも、火事だけではなく洪水・高潮・土砂崩れなどを補償できる商品があるためです。
ただし、「水災補償あり」と書かれていれば各社まったく同じというわけではありません。補償対象、保険金が支払われる条件、建物・家財の設定、免責金額、付帯サービス、保険料などを確認する必要があります。
そのため、特定の1社を全国一律に「一番おすすめ」と決めるより、自宅のハザードマップ上のリスクを確認したうえで、同条件で複数社を比較するのが合理的です。ここでは2026年時点で確認できる公式情報をもとに、水害に備える火災保険の選び方を整理します。
家の「水害保険」とは?基本的には火災保険の水災補償
住宅の水害に備える場合、代表的なのが火災保険の「水災」です。例えば損保ジャパンは、水災について台風・暴風雨などによる洪水、高潮、土砂崩れなどを対象として案内しています。[参照] 損保ジャパン「水災」
三井住友海上の「GK すまいの保険」でも、台風、暴風雨、豪雨などを原因とする洪水・高潮・土砂崩れ・落石などを水災補償の対象としており、内水氾濫についても案内されています。[参照] 三井住友海上「水災の補償内容」
ここで注意したいのが「水災」と「水濡れ」の違いです。大雨で川が氾濫して住宅が浸水するケースと、住宅内の給排水設備の事故によって水浸しになるケースは、火災保険では別の事故区分として扱われることがあります。「水に関する事故なら全部水災」と考えないことが重要です。
水害に備えるなら候補にしやすい火災保険
大手損害保険会社を中心に、住宅向け火災保険には水災を補償できる商品があります。代表例として、損保ジャパン「THE すまいの保険」、東京海上日動「トータルアシスト住まいの保険」、三井住友海上「GK すまいの保険」、セコム損保「セコム安心マイホーム保険」などが比較候補になります。
| 保険会社・商品例 | 水災について確認したい特徴 |
|---|---|
| 損保ジャパン「THE すまいの保険」 | 洪水・高潮・土砂崩れなどを水災として補償。プランと水災補償の有無を確認 |
| 東京海上日動「トータルアシスト住まいの保険」 | 水災を補償できるタイプがあり、補償タイプによって水災の有無が異なる |
| 三井住友海上「GK すまいの保険」 | 洪水・高潮・土砂崩れ・内水氾濫などについて水災補償を案内 |
| セコム損保「セコム安心マイホーム保険」 | 水災を補償するプランと補償しないプランがあるためプラン選択が重要 |
例えば東京海上日動では、「充実タイプ」「スタンダードタイプ」の例では水災リスクが補償対象ですが、「マンション向けタイプ」の例では水災が補償対象外となっています。つまり、保険会社名だけでなく契約するプランまで確認しなければ、水災に備えられているか判断できません。[参照] 東京海上日動「火災保険の補償内容」
セコム損保でも、公式案内ではワイドプランで水災が補償される一方、ベーシックプラン、スリムプランでは水災が対象外となる構成が示されています。[参照] セコム損保「セコム安心マイホーム保険」
「おすすめの会社」より先にハザードマップを確認する
火災保険を選ぶ前に確認したいのが、自宅がどの程度の水害リスクを抱えているかです。国土交通省・国土地理院の「ハザードマップポータルサイト」では、洪水、内水、高潮、津波、土砂災害などに関する情報を確認できます。[参照] ハザードマップポータルサイト
例えば河川の近くにある戸建てで、洪水浸水想定区域に入り、想定浸水深も大きい住宅なら、水災補償を外して保険料を安くすることには慎重な判断が必要です。一方、高層マンションの上層階などでは、住戸そのものの浸水リスクは戸建てとは大きく異なります。
ただし「川から遠いから安全」とも限りません。短時間の豪雨で排水能力を超えて道路や住宅地が浸水する内水氾濫や、山・崖に近い地域の土砂災害などもあります。洪水だけを見て判断せず、複数の災害リスクを確認することが大切です。
水災補償には「支払条件」がある
水災補償で特に確認したいのが、どの程度の被害から保険金の対象になるのかという条件です。「少し水が入っただけでも、修理代が必ず全額支払われる」とは限りません。
例えば損保ジャパンの案内では、台風・暴風雨・豪雨などによる洪水、融雪洪水、高潮、土砂崩れ、落石などについて、建物または家財に再調達価額の30%以上の損害が生じた場合や、床上浸水など所定の条件を満たした場合が水災補償の対象として示されています。
東京海上日動でも、水災について「床上浸水」「地盤面より45cmを超える浸水」「損害割合30%以上」などの条件が示されています。一方で、同社には特定の機械設備について浸水条件なしで水災損害を補償する特約も用意されています。太陽光・蓄電設備、給湯設備など高額設備がある住宅では、このような特約まで比較対象にするとよいでしょう。[参照] 東京海上日動「特約」
建物だけでなく「家財」の水災補償も確認する
戸建てで見落としやすいのが、建物と家財は保険上別々の対象になるという点です。建物の火災保険だけ契約していても、家具や家電などの家財が自動的にすべて補償されるとは限りません。
例えば床上浸水すると、床や壁だけでなく、冷蔵庫、テレビ、ベッド、ソファ、パソコン、衣類などが一度に被害を受ける可能性があります。家財を買い直す費用まで考えると、大きな金額になることがあります。
そのため水害リスクが高い住宅では、「建物+水災」だけを見るのではなく、建物と家財の双方について水災が対象になっているかを確認しておくことが重要です。
津波は通常の水災補償とは別なので要注意
「海の水が家に入るなら高潮も津波も水災では?」と思いやすいところですが、保険では原因によって扱いが異なります。
台風などによる高潮は火災保険の水災として補償対象になり得ます。一方、地震・噴火またはこれらによる津波の損害は、通常の火災保険の水災補償では原則としてカバーされません。地震保険の領域になります。
例えば損保ジャパンも水災の説明で、津波による浸水などは補償されないと明記しています。沿岸部に住んでいる場合は「水災を付けたから津波も大丈夫」と誤解せず、地震保険についても別途検討する必要があります。
2024年度から水災リスクによって保険料差が生じやすくなった
火災保険では、水災リスクを保険料へより細かく反映する仕組みが導入されています。損害保険料率算出機構の住宅物件向け参考純率では、水災リスクを1等地から5等地までの5区分に分けています。
同機構によると、1等地は水災保険料が最も安く、5等地が最も高く、参考純率上の水災保険料では5等地は1等地の約1.5倍です。ただし実際の保険料や区分の取り扱いは保険会社によって異なる場合があります。[参照] 損害保険料率算出機構「水災等地検索」
また、水災等地は洪水だけではなく、内水氾濫や土砂災害なども含めて評価されています。このため一般的な洪水ハザードマップと水災等地が必ず一致するわけではありません。
水災補償を外して保険料を安くするのはアリ?
水災補償を外せる商品・プランでは、その分保険料を抑えられる場合があります。ただし保険料だけを理由に外すのではなく、「最大でどの程度の損害を自己負担できるか」で考える必要があります。
例えば洪水で1階が大きく浸水した場合、床・壁・断熱材・設備・家具・家電など複数箇所に損害が及ぶ可能性があります。その金額を預貯金だけで負担するのが難しい家庭ほど、水災補償の重要性は高くなります。
実際、損害保険料率算出機構によると、2024年度の火災保険における水災補償付帯率は全国計で61.8%でした。同機構もハザードマップなどで水害リスクを確認し、必要な補償を受けられる契約内容になっているか確認することを呼びかけています。[参照] 損害保険料率算出機構「水災補償付帯率」
火災保険を比較するときのチェックポイント
水害への備えを重視するなら、単純な保険料ランキングではなく、同じ条件の見積もりを取って比較することが重要です。
- 洪水・高潮・土砂崩れ・内水氾濫の扱い
- 水災の保険金支払条件
- 建物だけでなく家財も対象にするか
- 保険金額が再建・再購入費用に対して十分か
- 免責金額(自己負担額)の設定
- 水災時に支払われる費用保険金・特約
- 給湯器・蓄電池など屋外設備や機械設備の扱い
- 事故受付や付帯サービス
- 地震保険を付帯するか
- 同じ補償条件にした場合の保険料
例えばA社が年間2万円安くても、水災の補償範囲や自己負担条件が違えば単純比較はできません。「保険料が安い会社」ではなく、必要な補償をそろえた状態で安い会社を探すのがポイントです。
戸建て・マンションで選び方は変わる
戸建ての場合、建物全体が契約者の資産になるため、洪水や土砂災害のリスクを比較的重く考える必要があります。1階部分に住宅設備や家電が集中している家では、浸水時の損害額も大きくなりやすいでしょう。
一方、マンションの高層階では住戸への直接的な浸水リスクは低くなる場合があります。しかし、地下や低層部分の電気設備・共用設備が浸水し、エレベーターや給水設備などに影響が出るケースも考えられます。専有部分と共用部分では保険の契約主体も異なるため、管理組合側の保険内容も確認しておくと安心です。
また1階や半地下の住戸は、高層階とは事情がまったく異なります。「マンションだから水災はいらない」と一律に判断するのではなく、階数、地形、浸水想定区域などを踏まえて判断する必要があります。
結局どこの水害保険がおすすめ?
水害対策を重視するなら、損保ジャパン、東京海上日動、三井住友海上、セコム損保など、水災補償を用意している複数の商品を同条件で見積もる方法が現実的です。ただし、ここで挙げた会社だけが選択肢という意味ではなく、他の損害保険会社やダイレクト型商品も含めて比較できます。
特に「おすすめ」は住所によって変わります。火災保険料は所在地、建物構造、築年数、保険金額、水災リスク、免責金額、補償内容など多くの条件で変化するためです。同じ会社でもAさんには割安、Bさんには割高ということが十分あります。
まずハザードマップを確認し、その次に「建物+家財+水災」など必要な条件を統一して2~4社程度の見積もりを比較すると、保険料だけに振り回されにくくなります。
まとめ|水害保険は会社名より「自宅のリスクと補償条件」で選ぶ
家の水害に備える保険は、一般的には火災保険の水災補償として加入します。洪水だけでなく、商品・契約条件によって高潮、土砂崩れ、内水氾濫なども対象になり得ます。
一方、すべての火災保険で水災が自動的に補償されるわけではありません。同じ保険会社でもプランによって水災が付く場合と付かない場合があり、保険金の支払条件にも注意が必要です。また地震による津波は通常の水災補償ではなく、原則として地震保険の対象領域です。
そのため、最初から「○○社が一番」と決めるより、①ハザードマップを確認する、②必要な補償を決める、③建物・家財の保険金額を決める、④免責金額などを同条件にする、⑤複数社の保険料と補償内容を比較するという順番がおすすめです。
水害リスクが低い地域でも内水氾濫や土砂災害など別のリスクが存在する場合があります。反対に、リスクの低い住宅で必要以上に補償を厚くすると保険料負担が大きくなります。水害保険選びでは「安さ」だけでも「補償の多さ」だけでもなく、自宅で現実に起こり得る損害と、万一の際に自己負担できる金額とのバランスを取ることが重要です。
※本記事は2026年8月時点で確認できる各社・公的機関の情報をもとにした一般的な解説です。実際の補償内容、支払条件、保険料、特約の名称・取扱いは契約時期や商品改定、建物条件などによって異なるため、契約前に最新の重要事項説明書・約款・見積書をご確認ください。


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