転職先から「試用期間は6カ月、その後に正社員登用」と説明されると、「健康保険や厚生年金は正社員になってからなのか」「それまでは前職の健康保険を任意継続すべきなのか」と迷うことがあります。
しかし、健康保険・厚生年金への加入は、単に「正社員という肩書きになったか」「試用期間が終わったか」で決まるものではありません。適用事業所で加入要件を満たして働き始めたのであれば、試用期間中でも原則として実際に使用関係が始まった日から社会保険の被保険者になります。
日本年金機構も、試用期間を設けている場合であっても、事実上の使用関係が発生した日から資格取得するという考え方を明確に示しています。[参照] 日本年金機構「資格取得の時期」
この記事では、6カ月の試用期間がある転職で健康保険・厚生年金へいつ加入するのか、任意継続は必要なのか、過去に「正社員になってから加入」だったケースとの違いまで具体的に解説します。
- 試用期間6カ月でも社会保険は原則として入社時から
- 「試用期間が終わってから社会保険」は届出誤りの例として示されている
- 正社員かどうかではなく労働時間・労働日数などで判断する
- 具体例:4月入社・試用期間6カ月ならどうなる?
- 任意継続は「新しい会社の健康保険に入れない期間」のための選択肢
- すでに任意継続していても新会社の健康保険に加入すれば終了する
- 任意継続と会社の健康保険を自由に選べるわけではない
- 過去に「正社員になってから社会保険」だった理由として考えられること
- 雇用契約書が「6カ月の有期契約」でも社会保険に入れないとは限らない
- 入社初日からマイナ保険証に反映されないことはある
- 給与から社会保険料が引かれる時期と資格取得日は別
- 試用期間中だけ社会保険に入れないと言われた場合の確認方法
- 社会保険に入れない空白期間が本当にある場合は任意継続などを検討する
- 任意継続は会社員時代より保険料負担が増えることがある
- 入社前に会社へ確認するなら「社会保険ありますか」だけでは足りない
- まとめ:加入条件を満たすなら6カ月の試用期間中でも入社日から社会保険が原則
試用期間6カ月でも社会保険は原則として入社時から
社会保険の加入対象となる働き方で採用されたのであれば、試用期間が6カ月あっても「6カ月後に正社員になるまで健康保険・厚生年金に入れない」というのが原則ではありません。
日本年金機構は、厚生年金保険の被保険者資格について、適用事業所に「使用されるようになった日」に取得すると説明しています。そして「使用されるようになった日」とは、事実上の使用関係が発生した日です。試用期間であっても給与が月単位で支払われる場合は、試用開始日に被保険者資格を取得するとされています。[参照] 日本年金機構「資格取得の時期」
つまり、4月1日入社で4月1日からフルタイム勤務を始め、9月30日までが試用期間、10月1日に正式な正社員扱いになる会社であっても、加入要件を満たしているなら社会保険の資格取得日は原則4月1日と考えます。
「試用期間が終わってから社会保険」は届出誤りの例として示されている
日本年金機構は、社会保険の資格取得届について実際に多い誤りも公表しています。その中には、試用期間が設定されているため、試用期間終了後の日付を資格取得日として届け出ていたケースがあります。
日本年金機構はこの事例について、健康保険・厚生年金保険の資格は事実上の使用関係が発生した日から取得するため、試用期間を設けている場合でも試用期間の当初から資格取得すると説明しています。[参照] 日本年金機構「届出誤りの実例」
短時間労働者向けの資料でも、「試用期間終了後を資格取得日としていた」ケースを届出誤りとして取り上げ、一般の被保険者についても同じ考え方になることが明記されています。
正社員かどうかではなく労働時間・労働日数などで判断する
社会保険は「正社員という名称の人だけが加入する制度」ではありません。アルバイト、パート、契約社員、試用社員などであっても、加入要件を満たせば健康保険・厚生年金の対象になります。
一般的には、その会社の通常の労働者と比較して、1週間の所定労働時間と1カ月の所定労働日数がともに4分の3以上であれば、健康保険・厚生年金の被保険者になるのが原則です。
たとえば一般社員が週40時間勤務で、試用期間中も週5日・1日8時間の週40時間勤務をするなら、名称が「試用社員」であっても通常はフルタイム相当です。この場合、「正式な正社員ではない」という理由だけで社会保険から外す考え方は適切ではありません。
具体例:4月入社・試用期間6カ月ならどうなる?
たとえば前職を3月31日に退職し、転職先へ4月1日に入社するとします。新しい会社では試用期間が4月1日から9月30日までの6カ月間で、10月1日から正式な正社員になる契約です。
試用期間中から週5日・1日8時間勤務で、正社員になった後とほぼ同じ労働時間で働くのであれば、社会保険の加入要件を満たす可能性が高く、資格取得日は原則として4月1日です。
この場合、前職の健康保険を4月から9月まで任意継続し、10月から転職先の健康保険へ切り替えるという流れには通常なりません。4月1日に転職先の健康保険の資格を取得すれば、その時点で新しい会社の健康保険へ切り替わることになります。
任意継続は「新しい会社の健康保険に入れない期間」のための選択肢
健康保険の任意継続は、退職後も以前加入していた健康保険へ一定期間継続して加入できる制度です。協会けんぽの場合、退職前まで継続して2カ月以上被保険者であることなどの条件を満たし、資格喪失日から20日以内に申し込む必要があります。[参照] 協会けんぽ「任意継続の加入条件について」
任意継続は、退職から次の就職まで空白期間がある場合や、再就職先で社会保険の加入条件を満たさない場合などに検討するものです。
したがって、退職翌日から新しい会社へ就職し、その日から新しい会社の健康保険資格を取得するのであれば、通常はその期間について任意継続を利用する必要はありません。
すでに任意継続していても新会社の健康保険に加入すれば終了する
転職までの空白期間があったため、すでに前職の健康保険を任意継続しているケースもあります。この場合でも、新しい勤務先で健康保険の被保険者資格を取得した後まで任意継続を続けることはできません。
協会けんぽは、任意継続の加入者が就職して健康保険などの被保険者資格を取得した場合、その時点で任意継続の資格を喪失すると案内しています。[参照] 協会けんぽ「資格の喪失について」
たとえば3月31日に退職し、4月は無職だったため任意継続に加入し、5月1日に新会社へ入社して社会保険資格を取得したなら、5月1日から新会社の健康保険となり、任意継続は資格喪失の手続きを行います。
任意継続と会社の健康保険を自由に選べるわけではない
「任意継続のほうが使い慣れているから、試用期間中だけこちらを使いたい」と考えることもありますが、新しい会社で健康保険の強制加入対象になれば、任意継続との好きなほうを選択する制度ではありません。
協会けんぽでは、任意継続の資格喪失事由の一つとして「就職して健康保険等の被保険者資格を取得したとき」を明記しています。つまり、新会社の健康保険へ加入すべき人はそちらへ切り替わります。[参照] 協会けんぽ「任意継続」
そのため、転職先が「社会保険加入対象です」と説明しているなら、任意継続を6カ月続ける前提で考える必要は基本的にありません。
過去に「正社員になってから社会保険」だった理由として考えられること
過去の職場で「試用期間中は社会保険なし、正社員になったら加入」という扱いを経験した人もいます。しかし、その経験だけを現在の制度上の正しい基準と考えることはできません。
当時の試用期間中は勤務時間が短かった、最初は別の短期雇用契約だった、勤務先自体の適用条件が異なっていた、あるいは会社側の社会保険手続きが適切ではなかった、といった複数の可能性があります。
たとえば最初の3カ月は週2日・1日5時間のアルバイト契約で、その後に週5日・8時間の正社員契約へ変更する形なら、加入時期が後になることはあり得ます。一方、初日から正社員と同じ週40時間働いているのに「試用期間だから」という理由だけで6カ月間加入させないのであれば、制度上は疑問が生じます。
雇用契約書が「6カ月の有期契約」でも社会保険に入れないとは限らない
試用期間とは別に、「最初の6カ月は契約社員で、その後正社員登用」という雇用形態になっている会社もあります。この場合も、契約社員だから健康保険・厚生年金に加入できないということではありません。
6カ月契約であっても、社会保険の加入要件を満たす労働時間・労働日数で継続的に雇用されるのであれば、契約期間中から加入対象になる可能性があります。
そのため、求人票に「試用期間6カ月」や「6カ月後に正社員登用」と書いてある場合は、「正社員になる日はいつか」よりも、入社時点の雇用契約上の所定労働時間・所定労働日数と、社会保険の資格取得日を確認することが大切です。
入社初日からマイナ保険証に反映されないことはある
資格取得日が入社日であっても、会社が資格取得届を提出してからシステムへ反映されるまで時間がかかることがあります。そのため、入社直後にマイナポータルなどで新しい健康保険情報が確認できない場合があります。
これは「まだ社会保険に入っていない」という意味とは限りません。重要なのは会社が何月何日を資格取得日として届け出ているかです。
入社直後に病院を受診する予定がある場合などは、人事担当へ「健康保険の資格取得日は入社日で手続きされていますか」「資格確認に必要な書類はありますか」と確認すると安心です。
給与から社会保険料が引かれる時期と資格取得日は別
最初の給与明細で健康保険料や厚生年金保険料が引かれていないと、「まだ加入していないのでは」と不安になることがあります。しかし、給与から控除されるタイミングと資格取得日は必ずしも一致しません。
会社によっては、当月分の社会保険料を翌月支給の給与から控除します。たとえば4月1日に資格取得していても、4月支給給与では控除せず、5月支給給与から4月分を控除することがあります。
したがって、加入日を確認したい場合は給与明細だけで判断せず、人事・総務担当へ「健康保険・厚生年金の資格取得日は何月何日ですか」と確認するのが最も確実です。
試用期間中だけ社会保険に入れないと言われた場合の確認方法
転職先から「6カ月間は試用期間なので社会保険には入れません。正社員になったら加入します」と説明された場合は、まず理由を具体的に確認しましょう。
たとえば次のように聞くと整理しやすくなります。
- 試用期間中の週の所定労働時間は何時間か
- 1カ月の所定労働日数は何日か
- 試用期間終了後と労働時間は変わるのか
- 健康保険・厚生年金の資格取得予定日は何月何日か
- 試用期間中が加入対象外になる根拠は何か
初日からフルタイムで、正社員登用後も勤務時間がほぼ変わらないにもかかわらず「試用期間だから6カ月後」と説明された場合には、会社の人事担当に再確認する価値があります。
社会保険に入れない空白期間が本当にある場合は任意継続などを検討する
一方で、新会社への入社まで日にちが空く場合や、入社当初の契約が社会保険の加入基準を満たさない場合には、健康保険の空白を作らないための手続きが必要です。
退職後の主な選択肢には、以前の健康保険の任意継続、国民健康保険への加入、家族の健康保険の被扶養者になる方法があります。どれを利用できるか、どの方法が有利かは収入や家族構成によって変わります。
協会けんぽの任意継続では、退職日の翌日に資格を取得し、原則2年間加入できます。ただし、新たに就職して健康保険の被保険者資格を取得すればその時点で任意継続資格を喪失します。[参照] 協会けんぽ「加入期間について」
任意継続は会社員時代より保険料負担が増えることがある
任意継続を検討するときは、保険料にも注意が必要です。在職中の健康保険料は原則として会社と従業員が負担しますが、任意継続では退職後に事業主負担分も本人が負担します。
協会けんぽは、任意継続の保険料について、原則として退職時の健康保険料の2倍程度になると説明しています。ただし標準報酬月額の上限などがあるため、実際の額が必ず2倍になるわけではありません。[参照] 協会けんぽ「任意継続」
そのため、本来なら転職初日から会社の健康保険へ加入できるのに、誤って任意継続を半年間続ける前提にしてしまうと、制度上の扱いだけでなく保険料負担の面でも不都合が生じます。
入社前に会社へ確認するなら「社会保険ありますか」だけでは足りない
求人票に「社会保険完備」と記載されていても、それだけでは資格取得日まで分からないことがあります。転職前に確認するなら、より具体的に質問するとよいでしょう。
たとえば「6カ月の試用期間がありますが、健康保険と厚生年金の資格取得日は入社日になりますか?」と聞けば、会社側も明確に回答しやすくなります。
また、雇用契約書や労働条件通知書に記載された雇用期間、所定労働時間、所定労働日数、試用期間中の待遇も確認しておきましょう。社会保険の加入時期を判断する重要な材料になります。
まとめ:加入条件を満たすなら6カ月の試用期間中でも入社日から社会保険が原則
転職先に6カ月の試用期間があり、その後に正式な正社員になる制度でも、社会保険は正社員登用の日から加入するとは限りません。健康保険・厚生年金の加入要件を入社時から満たしているのであれば、試用期間中であっても原則として事実上の使用関係が始まった日から資格を取得します。
日本年金機構も、試用期間を理由に試用期間終了後を資格取得日にするケースを届出誤りの例として示しています。そのため、初日から週5日フルタイムなど正社員と同程度の条件で働くのであれば、「正社員になる6カ月後まで任意継続」という前提ではなく、まず入社日から新会社の社会保険に加入するかを確認するのが適切です。
前職の健康保険を任意継続していたとしても、新しい会社で健康保険の資格を取得すれば、その取得日に任意継続の資格を喪失します。任意継続と新会社の健康保険を自由に選んで並行利用することはできません。
会社へ確認するときは、「試用期間中も社会保険に入れますか」だけでなく、「健康保険・厚生年金の資格取得日は何月何日ですか」と質問するのがおすすめです。これに加えて試用期間中の所定労働時間・労働日数が正社員登用後と同じかを確認すれば、自分の扱いをより正確に判断できます。
※本記事は2026年8月時点の日本年金機構および全国健康保険協会(協会けんぽ)の公開情報をもとに一般的な制度を解説しています。実際の加入可否は勤務先が社会保険の適用事業所か、雇用契約、所定労働時間・日数、契約期間などによって異なる場合があります。個別の扱いに疑問がある場合は勤務先の人事・総務担当、日本年金機構の年金事務所などへ確認してください。


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