火災保険を考えるときに分かりにくいのが、「自宅が火事になったら何に対してお金が出るのか」「二人暮らしならいくら付ければ足りるのか」という点です。実は火災保険では、住宅そのものを補償する建物と、家具・家電などを補償する家財を分けて考えるのが基本です。
そのため、必要な保険金額は単純に「二人暮らしだから300万円」といった人数だけでは決められません。持ち家か賃貸かによっても考え方が大きく異なります。
二人暮らしで家具などを買い直すための補償を考えているのであれば、それは基本的に「家財」の補償です。一方、持ち家そのものが焼けて建て直す費用を補償するのが建物の火災保険です。
火災保険の「建物」と「家財」は別物
日本損害保険協会は、火災保険では建物と家財を分けて契約すると説明しています。つまり建物だけを保険対象にしても、家の中にある家具や家電まで自動的にすべて補償されるとは限りません。[参照:日本損害保険協会 火災保険]
建物には、住宅そのものや契約内容に応じて建物に付属する設備などが含まれます。一方、家財は生活のために住宅内に置いている家具、家電、衣類などが中心です。
| 保険の対象 | 主なもの |
|---|---|
| 建物 | 住宅そのものなど |
| 家財 | テレビ、冷蔵庫、洗濯機、ベッド、テーブル、衣類など |
したがって「火災になった後、家具や家電をもう一度そろえるためのお金が欲しい」という場合には、建物ではなく家財の保険金額を確認する必要があります。
賃貸なら自分の家具・家電を守る「家財」が中心
賃貸住宅の場合、建物は通常、大家・オーナーの所有物です。日本損害保険協会も、借家に住んでいる場合は家財を保険の対象として契約すると案内しています。[参照:日本損害保険協会]
例えば賃貸マンションで火災が発生し、テレビ、冷蔵庫、洗濯機、ベッド、衣類などを失った場合、それらを補償するのが家財保険です。
なお、賃貸向けの火災保険には家財補償だけでなく、大家に対する法律上の損害賠償責任に備える「借家人賠償責任」などがセットされている商品があります。賃貸の場合は家財の金額だけでなく、こうした補償内容も確認しておくことが重要です。
二人暮らしの家財はいくらあれば足りる?
家財保険金額は「世間の平均額」に合わせるのではなく、火災などで家財を失ったとき、同等の物を現在の価格で買い直すためにいくら必要かを基準に考えるのが基本です。これは再調達価額(新価)という考え方です。
一例として、損保ジャパンの賃貸向け保険では、家財保険金額の目安として単身100万~200万円、二人暮らし300万~400万円、3人家族500万~600万円、4人家族700万円という例を示しています。これはあくまで特定商品の目安であり、すべての家庭にそのまま当てはまる金額ではありません。[参照:損保ジャパン スマート賃貸火災保険]
二人暮らしなら300万~400万円程度が一つの参考例にはなりますが、実際に所有している家財が少なければ必要額は小さくなり、高価な家電・家具・衣類などが多ければ大きくなります。
「うちはそんなに家具がない」と思っても合計すると高くなる
家財の金額を考える際によくあるのが、テレビや冷蔵庫など目立つ家電だけを合計してしまうケースです。しかし火災で全損した場合には、生活用品を幅広く買い直す可能性があります。
例えば二人暮らしなら、冷蔵庫15万円、洗濯機10万円、テレビ10万円、ベッド・寝具20万円、テーブルや収納家具15万円、パソコンやスマートフォンなど20万円、衣類や靴30万円と仮定するだけで120万円になります。
さらに電子レンジ、炊飯器、掃除機、エアコンなどの家電、食器、調理器具、カーテン、本、趣味用品、日用品などを一からそろえると金額は増えていきます。このため「高価な家具は持っていないから100万円あれば十分」とは必ずしも言い切れません。
家財保険金額は自宅の持ち物を棚卸しすると決めやすい
自分たちに本当に必要な家財保険金額を知りたい場合は、部屋ごとに家財を大まかに書き出してみる方法が実用的です。現在の中古価格ではなく、同等の物を新たに購入するといくらかかるかを基準に計算します。
- リビング:テレビ、ソファ、テーブル、エアコン、照明など
- キッチン:冷蔵庫、電子レンジ、炊飯器、食器、調理器具など
- 寝室:ベッド、布団、収納家具、衣類など
- その他:パソコン、趣味用品、生活用品など
例えば合計して250万円程度になったのであれば、家財300万円という設定には一定の余裕があります。一方、実際には500万円程度の家財があるのに保険金額を150万円にしているなら、全損時に買い直す資金として不足する可能性があります。
損保ジャパンも家財について、同等の物を新たに購入するために必要な「新価」を基準に保険金額を設定する考え方を案内しています。[参照:損保ジャパン 家財の保険金額の設定方法]
持ち家なら家財だけでなく建物の保険金額も重要
持ち家の場合には、家財とは別に建物の補償を考えます。ここで注意したいのは、住宅を購入したときの価格や住宅ローン残高をそのまま火災保険金額にするとは限らないことです。
火災保険では再調達価額という考え方があり、日本損害保険協会は「同等のものを新たに建築あるいは購入するのに必要な金額」と説明しています。[参照:日本損害保険協会 損害保険Q&A]
土地は火災で焼失して再購入するものではないため、土地代を含む不動産の購入価格と建物の保険金額は別に考えます。持ち家の場合は保険会社や代理店が建物の構造、所在地、延床面積などから評価額を算出するため、その評価を確認して適切な金額を設定することが重要です。
保険金額を必要以上に高くしても得をするわけではない
「心配だから家財が300万円しかなくても1,000万円の保険を付ければ安心」と考えるのは適切ではありません。損害保険は、事故によって実際に生じた損害を補償することが基本だからです。
日本損害保険協会は、契約金額の設定について再調達価額または時価を基準とする考え方を示しています。また損保ジャパンも、評価額を超える保険金額を設定する超過保険について、超過部分に相当する保険料が無駄になると案内しています。[参照:損保ジャパン 火災保険の契約内容確認]
反対に、保険料を安くするため必要額より極端に低く設定すると、全損時に生活を再建するためのお金が不足する可能性があります。「できるだけ高く」でも「できるだけ安く」でもなく、所有している家財の再取得に必要な金額へ近づけるのが基本です。
火災保険なら地震による火災も出るとは限らない
もう一つ重要なのが地震です。通常の火災保険では、地震・噴火またはこれらによる津波を原因とする火災や損壊などは、一般的な火災とは扱いが異なります。地震による損害へ備えるには地震保険の契約内容を確認する必要があります。
そのため「火事なら原因を問わず火災保険で全部補償される」と考えないことが大切です。火災、落雷、風災、水災、盗難、破損など、どこまで対象になるかは契約している商品・プランによって異なります。
保険証券や契約者ページでは、建物と家財のどちらが対象なのか、保険金額はいくらなのか、地震保険が付いているか、自己負担額はいくらかを確認しておきましょう。
まとめ:二人暮らしなら「家を直すお金」と「家具を買い直すお金」を分けて考える
火災保険で必要な金額を考えるときは、まず建物と家財を分けて考えることが重要です。家具・家電・衣類などを火災後に買い直すための補償は「家財」に当たります。
二人暮らしの家財については300万~400万円程度を目安として示す保険商品もありますが、それが全員の正解ではありません。家財が少ない家庭と、高価な家電・家具・衣類・趣味用品などを多数所有する家庭では必要額が違います。自宅にある物を一度書き出し、同等品を現在新品で買い直す場合の合計額を計算する方法が分かりやすいでしょう。
賃貸なら家財と借家人賠償責任などの内容を、持ち家なら家財に加えて建物の再調達価額も確認します。すでに火災保険へ加入している場合は、まず保険証券の「保険の対象」と「保険金額」を確認し、現在の家財や建築費に対して過不足がないか見直すことが大切です。


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