マイホームを売却したときの税金は、「売却価格-住宅ローン残高」で計算するわけではありません。住宅ローンがいくら残っているかは売却後に手元へ残るお金には大きく影響しますが、原則として不動産の譲渡所得を計算する際の取得費にはなりません。
例えば2022年6月に4,600万円で購入したマイホームを、2026年10月に4,800万円で売却し、その時点の住宅ローン残高が4,200万円だったとしても、4,800万円-4,200万円=600万円にそのまま税金がかかるわけではありません。
税金の基本的な計算は、「売却価格-取得費-譲渡費用」です。さらに、自分が住んでいたマイホームで一定の要件を満たせば、譲渡所得から最高3,000万円を差し引ける「居住用財産を譲渡した場合の3,000万円の特別控除」を利用できる可能性があります。
ただし、4,600万円で購入して4,800万円で売れたから譲渡益が単純に200万円とも限りません。建物については所有期間中の減価償却費相当額を取得費から差し引く必要があるためです。ここでは、住宅ローン残高との違い、取得費の計算、3,000万円特別控除、確定申告まで順番に解説します。
- マイホーム売却の税金は住宅ローン残高では計算しない
- 「4,800万円-4,200万円=600万円」は税務上の利益ではない
- 税務上は4,600万円の購入価格を取得費の基礎にする
- 4,600万円で買って4,800万円で売っても利益は単純に200万円ではない
- 建物部分は減価償却されるため譲渡益が増えることがある
- 売却時の仲介手数料などは譲渡費用として差し引ける
- 4,800万円で売った場合の譲渡所得を具体例で考える
- マイホームなら譲渡所得から最高3,000万円を控除できる可能性がある
- 3,000万円特別控除は「確定申告すれば誰でも使える」わけではない
- 3,000万円特別控除を使うなら確定申告が必要
- 2022年6月購入・2026年売却なら原則「短期譲渡所得」
- 短期譲渡でも3,000万円特別控除は利用できる
- 住宅ローン残高4,200万円は税額ではなく手取り額に影響する
- 購入時と売却時の諸費用の領収書は捨てない
- 新しい住宅を買うなら住宅ローン控除との関係にも注意
- 今回のケースを整理するとどうなる?
- まとめ:600万円に課税されるのではなく、譲渡所得を計算して3,000万円控除を判定する
マイホーム売却の税金は住宅ローン残高では計算しない
最初に押さえたいのが、住宅ローン残高と譲渡所得は別物だという点です。
不動産を売却したときの譲渡所得は、基本的に次の式で計算します。
譲渡所得=売却価格-(取得費+譲渡費用)
国税庁も、土地や建物の譲渡所得について、売った金額から取得費と譲渡費用を差し引いて計算するとしています。[参照:国税庁 譲渡所得の計算のしかた]
一方、住宅ローン残高4,200万円は金融機関に返済しなければならない借金の残額です。これは売却代金から精算されますが、通常、譲渡所得の計算で4,800万円から直接差し引く項目ではありません。
「4,800万円-4,200万円=600万円」は税務上の利益ではない
売却価格4,800万円、住宅ローン残高4,200万円なら、単純計算ではローン返済後に600万円が残ります。
しかし、この600万円はあくまで住宅ローン返済前後の資金差額であり、税務上の利益である譲渡所得とは別です。
例えば次のようなイメージです。
| 項目 | 金額 | 意味 |
|---|---|---|
| 売却価格 | 4,800万円 | 買主から受け取る金額 |
| 住宅ローン残高 | 4,200万円 | 金融機関へ返済する残債 |
| 単純な差額 | 600万円 | 税務上の譲渡益ではない |
さらに実際には、この600万円から不動産会社への仲介手数料、抵当権抹消費用、住宅ローンの一括返済手数料などが出ていくこともあります。
したがって、「売却後に手元へ残る金額」と「税金を計算する利益」は完全に分けて考える必要があります。
税務上は4,600万円の購入価格を取得費の基礎にする
2022年に4,600万円で購入した住宅なら、税金の計算では住宅ローン残高ではなく、その不動産を購入したときの金額が取得費の基礎になります。
取得費には、不動産の購入代金だけでなく、一定の購入手数料や設備費、改良費などを含められる場合があります。国税庁では、土地・建物の購入代金、購入手数料などを取得費に含めるとしています。[参照:国税庁 取得費となるもの]
例えば購入時に支払った仲介手数料、登録免許税、不動産取得税、印紙税などについても、一定の場合には取得費へ含められます。そのため、購入時の売買契約書や領収書を残しておくことが重要です。
ただし、住宅ローンの元金返済額が取得費になるわけではありません。「ローンをいくら返したか」ではなく、「住宅をいくらで取得したか」が基本になります。
4,600万円で買って4,800万円で売っても利益は単純に200万円ではない
購入価格4,600万円、売却価格4,800万円なので、一見すると利益は200万円に見えます。
しかし、自宅の土地と建物を一緒に売却する場合、土地と建物では取得費の計算方法が異なります。土地は原則として購入価格等をそのまま取得費の基礎にできますが、建物は時間の経過による価値の減少を考慮する必要があります。
国税庁は、建物の取得費について、建物の購入代金などから所有期間中の減価償却費相当額を差し引いて計算するとしています。[参照:国税庁 建物の取得費の計算]
つまり、購入時4,600万円だった土地・建物全体の取得費が、売却時にもそのまま4,600万円になるとは限りません。
建物部分は減価償却されるため譲渡益が増えることがある
マイホームの建物については、事業用物件とは異なる非業務用建物の計算方法によって、所有期間中の減価償却費相当額を計算します。
国税庁が示す基本式は次のとおりです。
建物の取得価額×0.9×償却率×経過年数=減価償却費相当額
償却率は木造、鉄骨造、鉄筋コンクリート造など建物の構造によって異なります。また非業務用建物の経過年数は、6か月以上の端数を1年、6か月未満を切り捨てて計算します。[参照:国税庁]
例えば土地2,500万円、建物2,100万円という内訳だったとしても、売却時の建物取得費は2,100万円そのままではなく、そこから数年間分の減価償却費相当額を差し引きます。
その結果、売却価格4,800万円と購入価格4,600万円との差が200万円でも、税務上の譲渡益は200万円より大きくなる場合があります。
売却時の仲介手数料などは譲渡費用として差し引ける
一方で、マイホームを売るために直接支払った一定の費用は「譲渡費用」として売却価格から差し引けます。
代表的なものは、不動産会社へ支払う仲介手数料、売買契約書の印紙代、売却のために必要となった測量費などです。国税庁もこれらを譲渡費用の代表例として挙げています。[参照:国税庁 譲渡費用となるもの]
例えば4,800万円で売却し、売却時の仲介手数料等として170万円程度かかったのであれば、その一定の費用を譲渡所得の計算上差し引けます。
ただし、固定資産税など不動産の維持・管理に必要だった費用や、単なる修繕費などは原則として譲渡費用にはなりません。何でも売却価格から差し引けるわけではありません。
4,800万円で売った場合の譲渡所得を具体例で考える
実際の土地・建物の内訳や購入時諸費用が分からないため、正確な譲渡所得は売買契約書などを確認しなければ計算できませんが、仕組みを理解するために簡略化した例を考えてみます。
例えば、減価償却後の土地・建物の取得費と購入時に取得費へ加算できる費用を合わせて4,400万円、売却時の仲介手数料などの譲渡費用が170万円だったとします。
この場合は、4,800万円-4,400万円-170万円=230万円となり、譲渡所得は230万円です。
住宅ローン残高が4,200万円でも4,000万円でも、この230万円という譲渡所得の計算そのものは原則として変わりません。
逆に、減価償却後の取得費や譲渡費用を計算した結果、売却価格を上回れば譲渡損失になる可能性もあります。したがって「購入価格より200万円高く売れた=必ず200万円の利益」とも断定できません。
マイホームなら譲渡所得から最高3,000万円を控除できる可能性がある
自分が実際に居住していたマイホームを売却した場合、一定の条件を満たせば「居住用財産を譲渡した場合の3,000万円の特別控除」を利用できます。
国税庁によると、この特例はマイホームを売った場合、所有期間の長短に関係なく譲渡所得から最高3,000万円まで控除できる制度です。[参照:国税庁 マイホームを売ったときの3,000万円特別控除]
例えば計算した譲渡所得が230万円で、3,000万円特別控除の要件を満たす場合は次のようになります。
譲渡所得230万円-特別控除230万円=課税譲渡所得0円
3,000万円を満額必ず差し引くというより、譲渡所得が3,000万円未満なら、その譲渡所得の金額を上限に控除する仕組みです。
したがって、今回のような4,600万円で購入した自宅を4,800万円で売却するケースでは、実際の譲渡益が3,000万円以内で、かつ特例の要件を満たせば、売却益に対する所得税・住民税が0円になる可能性は高いと考えられます。
3,000万円特別控除は「確定申告すれば誰でも使える」わけではない
3,000万円特別控除には条件があります。単に住宅を所有していて確定申告をすれば自動的に適用される制度ではありません。
代表的な要件として、現在自分が住んでいる家屋を売る場合、または以前住んでいた住宅なら原則として住まなくなってから3年を経過する日の属する年の12月31日までに売る場合などがあります。
また、売却した年の前年・前々年に同じ3,000万円特別控除など一定のマイホーム特例を利用していないこと、売却相手が親子や夫婦、生計を一にする親族など特別な関係にある人ではないことなどの条件があります。[参照:国税庁 適用要件]
節税目的だけで一時的に入居した家や、別荘など主として趣味・保養目的で所有する家なども対象外です。
一般的に、自分たちが普通に生活していたマイホームを第三者へ通常の売買で売却するケースであれば対象になる可能性がありますが、最終的には個別の条件を確認する必要があります。
3,000万円特別控除を使うなら確定申告が必要
3,000万円特別控除によって最終的な税金が0円になる場合でも、特例を適用するための確定申告は必要です。
国税庁は、この特例を受けるためには一定の書類を添えて確定申告をする必要があると明記しています。[参照:国税庁]
2026年中に引き渡して税務上2026年の譲渡となる場合、原則として2027年の確定申告期間に2026年分の譲渡所得を申告します。
申告時には、確定申告書のほか「譲渡所得の内訳書(確定申告書付表兼計算明細書)土地・建物用」などを使用します。購入時・売却時の売買契約書や仲介手数料などの資料も整理しておくことが重要です。
「3,000万円以下の利益だから申告しなくてよい」のではなく、「確定申告で3,000万円特別控除を適用した結果、課税所得が0円になる」という順序で考えると分かりやすいでしょう。
2022年6月購入・2026年売却なら原則「短期譲渡所得」
不動産売却では、所有期間が長期か短期かによって税率が大きく異なります。
長期・短期の判定は「実際に5年間住んだか」ではなく、売却した年の1月1日時点で所有期間が5年を超えているかで判定します。
国税庁によると、2026年中に売却した場合、2020年12月31日以前に取得していれば長期譲渡所得、2021年1月1日以後に取得していれば短期譲渡所得となります。[参照:国税庁 土地や建物を売ったとき]
2022年6月に購入して2026年10月に売却する場合、2026年1月1日時点では所有期間5年以下なので、原則として短期譲渡所得です。
短期譲渡所得の通常税率は所得税30%、住民税9%で、さらに所得税額に対する復興特別所得税があります。[参照:国税庁 短期譲渡所得の税額]
ただし、3,000万円特別控除を使って課税譲渡所得が0円になれば、この短期譲渡所得の高い税率を掛ける対象自体がなくなります。
短期譲渡でも3,000万円特別控除は利用できる
「5年以内にマイホームを売ると3,000万円控除が使えない」と誤解されることがありますが、これは正しくありません。
国税庁は、マイホームの3,000万円特別控除について所有期間の長短に関係なく利用できるとしています。
そのため2022年6月に購入し、2026年10月に売却する短期譲渡であっても、居住用財産としての要件などを満たせば3,000万円特別控除を利用できます。
所有期間が影響するのは、特別控除を適用してもなお課税所得が残った場合の税率や、10年超所有のマイホームに適用される軽減税率など別の制度です。
住宅ローン残高4,200万円は税額ではなく手取り額に影響する
住宅ローン残高は譲渡所得の計算には直接使いませんが、売却後に実際いくら残るかを考えるうえでは非常に重要です。
例えば売却価格4,800万円から住宅ローン4,200万円を完済すると600万円残ります。しかし、そこから不動産会社の仲介手数料、契約書の印紙代、抵当権抹消関連費用、ローン一括返済時の手数料などがかかります。
仮に売却関連費用が180万円なら、単純な資金計算では4,800万円-4,200万円-180万円=420万円程度となります。
これは税金の計算ではありませんが、引っ越し代や次の住宅の初期費用などを考えるうえで重要な金額です。
したがって「600万円全部が手元に残り、さらにそこから税金を払う」と考えるのではなく、税務上の譲渡所得と売却後の資金収支を別々に計算しましょう。
購入時と売却時の諸費用の領収書は捨てない
譲渡所得を正確に計算するためには、2022年の住宅購入時の資料を揃えることが重要です。
特に売買契約書、土地・建物の価格内訳、仲介手数料の領収書、登記関係の資料、不動産取得税の資料、印紙税などを確認します。
売却時についても、売買契約書、不動産会社への仲介手数料、印紙代、測量など売却のために直接必要となった費用の資料を残しておきます。
取得費が分からない場合には売却代金の5%を概算取得費として計算できる制度がありますが、4,600万円で購入したことを証明できるケースで安易に5%を使えば、譲渡所得が極端に大きくなってしまう可能性があります。[参照:国税庁 取得費が分からないとき]
最近購入した物件であれば、購入時の資料はできるだけ探しておくことをおすすめします。
新しい住宅を買うなら住宅ローン控除との関係にも注意
売却後に新しいマイホームを購入し、住宅ローン控除を利用する予定がある場合には注意が必要です。
3,000万円特別控除と、新居についての住宅ローン控除は、売却・入居する年の関係によって併用できないケースがあります。
国税庁も、住宅ローン控除の対象となる住宅へ入居した年、その前年または前々年にマイホームの3,000万円特別控除を利用した場合などには、住宅ローン控除を受けられない旨を案内しています。[参照:国税庁 3,000万円特別控除と住宅ローン控除]
そのため、すぐに新居を購入する予定がある場合は、「今回の売却で3,000万円特別控除を使ったほうが得か」「新居の住宅ローン控除を使ったほうが得か」を事前に比較することが重要です。
今回の売却益が数百万円程度なら、3,000万円特別控除による節税額と、新しい住宅で受けられる住宅ローン控除の総額を比較した結果、必ずしも3,000万円特別控除を選ぶのが最善とは限りません。
今回のケースを整理するとどうなる?
2022年6月に4,600万円で購入し、2026年10月に4,800万円で売却、住宅ローン残高が4,200万円というケースを整理すると、次のようになります。
| 確認事項 | 考え方 |
|---|---|
| 売却価格 | 4,800万円 |
| ローン残高 | 4,200万円 |
| 4,800万円-4,200万円 | 600万円だが税務上の利益ではない |
| 譲渡所得 | 4,800万円-取得費-譲渡費用で計算 |
| 建物取得費 | 購入価格等から減価償却費相当額を控除 |
| 所有期間 | 2026年売却なら原則として短期譲渡 |
| 3,000万円特別控除 | 居住用財産などの要件を満たせば利用可能 |
| 確定申告 | 特別控除を利用するなら必要 |
つまり、最初に計算すべきなのは600万円ではありません。まず土地・建物の取得費を正しく計算し、そこから売却時の譲渡費用を差し引いて実際の譲渡所得を出します。
その譲渡所得が例えば数百万円で、通常の自宅売却として3,000万円特別控除の要件を満たすなら、確定申告によって課税譲渡所得を0円にできる可能性があります。
まとめ:600万円に課税されるのではなく、譲渡所得を計算して3,000万円控除を判定する
マイホームを4,800万円で売却し、住宅ローンが4,200万円残っている場合でも、4,800万円-4,200万円=600万円にそのまま税金がかかるわけではありません。住宅ローン残高は借金の残額であり、譲渡所得の計算とは別です。
税務上は、「売却価格4,800万円-取得費-譲渡費用」によって譲渡所得を計算します。購入価格は4,600万円ですが、建物部分については所有期間中の減価償却費相当額を差し引く必要があります。その一方で、購入時に取得費へ算入できる諸費用や、売却時の仲介手数料などを加味できる場合があります。
そして、自分が実際に住んでいたマイホームで、親族への売却ではないことなど一定の条件を満たせば、所有期間が5年以下でも最高3,000万円の特別控除を利用できます。
今回のように購入価格4,600万円、売却価格4,800万円という価格差であれば、取得費・減価償却・譲渡費用を正確に計算した結果の譲渡益が3,000万円以内で、特例の要件を満たすなら、3,000万円特別控除によって売却益に対する所得税・住民税が0円になる可能性は高いでしょう。
ただし、特別控除で税額が0円になる場合でも、特例を使うための確定申告は必要です。また2022年6月取得の住宅を2026年に売却すると通常は短期譲渡所得に該当するため、もし3,000万円特別控除を使えない事情があれば税率が高くなる点にも注意が必要です。
さらに売却後すぐに新しい住宅を購入する場合は、新居の住宅ローン控除と3,000万円特別控除を併用できないケースがあります。売却前に、購入時の売買契約書、土地・建物の価格内訳、購入時諸費用、売却時諸費用を整理し、必要に応じて税務署や税理士へ確認したうえで、どの特例を利用するか判断するのが安全です。


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