仕事中のケガや病気により就労が困難になった際、健康保険の制度である「傷病手当金」は生活を支える大きな助けとなります。しかし、療養中に「このまま退職するべきか?」と迷う方も少なくありません。今回は、傷病手当金を受給中に退職する場合の注意点や手続きについて詳しく解説します。
傷病手当金とは?制度の基本を押さえる
傷病手当金とは、病気やケガによって働けなくなった場合に、健康保険から支給される給付金です。支給要件は以下のとおりです。
- 業務外の病気やケガであること
- 労務不能であること(医師の証明が必要)
- 連続して3日間の待期期間の後、4日目以降も労務不能であること
- 給与の支払いがない、または少ないこと
この制度は、被保険者として健康保険に加入している間はもちろん、退職後も一定条件を満たせば継続して受給が可能です。
退職後も傷病手当金を受給する条件
退職後も傷病手当金を受け取るためには、退職日以前からすでに傷病手当金を受給しており、かつ退職日に「労務不能の状態」であることが必要です。つまり、退職前に傷病手当の支給が開始されていることが大前提です。
また、退職時に健康保険に継続加入していたこと(任意継続ではなく、被保険者としての資格を持っていた)が条件となります。
医師の証明が重要なカギを握る
傷病手当金の申請には、医師が「労務不能」と認めた期間が記載された診断書や意見書が必要です。書類の提出が遅れても、労務不能の事実があればさかのぼって申請が可能ですが、退職後に新たな診断期間がない場合、支給継続が認められないケースもあります。
したがって、退職を検討している場合は、退職日以降も労務不能である旨を記載してもらえるよう、事前に医師と相談することが大切です。
実際の流れと注意点
たとえば、5月に入社し6月に骨折で休職、7月初旬に退職を予定している場合、6月中に「労務不能である」と医師の証明をもらい、傷病手当金の支給が始まっていれば、退職後も継続して手当金を受給することが可能です。
しかし、初回の申請書に退職日以降の診断が含まれていない場合や、医師の記載が「診察日まで」で止まっている場合は、支給継続の根拠が乏しくなるため注意が必要です。
書類提出がまだでも諦めない
傷病手当金は、原則として最長2年以内であればさかのぼって請求が可能です。そのため、たとえ書類提出が遅れていても、労務不能が継続していれば受給資格を失うわけではありません。
ただし、医師の証明がない期間があると支給が止まってしまうため、なるべく早めに診断書類を整え、会社や健康保険組合と連携を取るようにしましょう。
まとめ:退職後も制度を活用するために
傷病手当金は、就労不能時の生活を支える制度であり、退職後も継続して受け取ることが可能です。ただし、退職時点で受給が開始されていることと、医師の証明が確実にあることが重要なポイントとなります。
体調に不安がある中での手続きは大変ですが、焦らず制度を活用するためにも、医師・会社・保険者と連携し、必要な書類を早めに整えることをおすすめします。
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