心身の不調により働くことが困難な場合、傷病手当金は生活を支える大切な制度です。とくに適応障害のような精神的疾患での申請には、いくつかの特有のポイントがあります。本記事では、休職前後の具体的な手続きと受給条件についてわかりやすく解説します。
傷病手当金の基本的な受給条件
健康保険の被保険者が、業務外の病気やケガで就労不能となった場合、最長で1年6ヶ月間、傷病手当金を受け取ることができます。受給には以下の4つの条件すべてを満たす必要があります。
- 業務外の病気やケガによる療養である
- 労務不能である(医師の証明が必要)
- 連続する3日間の待機期間がある
- 会社から給与の支払いがない
このうち「3日間の待機」は、有給・欠勤を問わず「出勤していない日」が連続して3日間必要です。例えば、7月1日から休職を始める場合、その前に3日間連続して仕事を休んでいないと、待機期間が7月1日から開始されます。
待機期間の扱いに注意
待機期間とは、傷病手当金の支給が開始されるための準備期間です。この3日間に出勤してしまうと、そこからリセットされるため、あらためて3日間連続の欠勤が必要になります。
例:7月1日から休職し、それまで毎日出勤していた場合→待機期間は7月1日〜3日(出勤なしの場合)で、支給は7月4日からとなります。
給与が支給された月も受給できるのか?
「給与が支給される月」と「実際の労働日」は分けて考えます。たとえば、6月に働いた分の給料が7月に支給される場合、7月に労務提供がなければ、給与支給の有無にかかわらず傷病手当金の申請は可能です。
大切なのは「休職期間中に、会社から給料が支払われていないかどうか」。あくまで労務に対して支払われるものが対象となるため、前月勤務分の給与は基本的に影響しません。
適応障害でも傷病手当金は受給可能
適応障害のような精神疾患であっても、医師による「労務不能の診断」がある場合、傷病手当金の対象となります。職場復帰の目処が立たない場合でも、医師の意見書があれば支給は継続可能です。
ただし、診断書の日付と実際の休職開始日が一致していることが望ましく、事後的に「過去にさかのぼっての診断書」は認められないケースもあるため、事前に主治医との相談が必要です。
手続きのポイントと必要書類
申請に必要な書類は以下の通りです。
- 傷病手当金支給申請書(会社と医師の記入欄あり)
- 診断書(主治医が記載)
- 会社の就労状況証明書(勤務実績の確認)
申請は月単位で行うため、休職が長期にわたる場合は毎月申請書類を用意する必要があります。会社側との協力が不可欠ですので、早めに人事や総務へ相談しておきましょう。
まとめ:正確な申請で経済的な安心を
適応障害による休職でも、条件を満たせば傷病手当金の受給は可能です。「待機期間」「労務不能の証明」「給与支給の有無」の3点を明確にしたうえで、正しく手続きを行うことで、療養に専念できる環境が整います。
心身の健康を最優先にしつつ、不安を少しでも軽減するために、制度の仕組みを知って活用しましょう。
コメント