親や義父母が子やその配偶者のために個人年金保険を契約するケースは少なくありません。しかし、このときに気をつけたいのが「贈与税」の扱いです。契約者・被保険者・受取人が誰なのかによって税金の発生有無が異なるため、仕組みを正しく理解しておく必要があります。
個人年金保険における契約者・被保険者・受取人の関係
個人年金保険は、誰が契約して保険料を払うか、誰が被保険者か、誰が年金を受け取るかで課税関係が変わります。一般的な組み合わせは以下の通りです。
| 契約者 | 被保険者 | 年金受取人 | 税務上の扱い |
|---|---|---|---|
| 本人 | 本人 | 本人 | 所得税(年金所得として課税) |
| 親など別人 | 本人 | 本人 | 親からの贈与とみなされる可能性あり |
| 本人 | 別人 | 本人 | 贈与税または相続税が発生する場合も |
つまり、契約者と実際の支払者が異なる場合は、その支払額が「贈与」とみなされる可能性が高くなります。
今回のケースの整理
質問のケースでは、「義父が契約者」「娘の夫(被保険者)」「年金受取人もおそらく娘の夫」という構成です。そして義父が最初の5年間の掛金(12万円×5年=60万円)を負担したのち、6年目以降は契約者を娘の夫に変更し、本人が支払う形にするというものです。
この場合、義父が支払った最初の5年間分(計60万円)は贈与とみなされる可能性があります。ただし、年間の支払額が12万円であるため、贈与税の基礎控除額である110万円以下に収まる年は課税対象になりません。
贈与税が発生するかどうかの判断
贈与税は「年間110万円を超える贈与」に対して課税されます。義父から娘の夫への贈与とみなされる場合でも、1年あたりの贈与額が12万円であれば、課税の対象にはなりません。
つまり、5年間で合計60万円の支払いであっても、「各年に分けて贈与が行われた」と考えられるため、贈与税は発生しません。ただし、税務署から質問を受けた場合に説明できるよう、契約内容や支払い履歴を保管しておくと安心です。
契約者変更をする際の注意点
6年目から契約者を義父から娘の夫へ変更する場合、保険会社にて正式な「契約者変更手続き」を行う必要があります。この際、契約者変更時点での積立金(解約返戻金相当額)が贈与とみなされることがあります。
ただし、個人年金保険の途中変更で少額の場合や、基礎控除額を下回る場合には、実際に課税されるケースはほとんどありません。
最初から娘の夫を契約者にする方法について
もう一つの選択肢として、「最初から娘の夫を契約者・被保険者とし、義父が現金で渡す」方法もあります。これは形式上は夫が自分で支払っている形となりますが、実質的には義父からの贈与となります。
ただし、年間12万円の範囲であれば、こちらも基礎控除内に収まるため課税対象にはなりません。つまり、どちらの方法でも贈与税が発生するリスクは低いと言えます。
実務上のおすすめ対応
- 保険契約の名義・支払口座を整理しておく
- 義父からの援助が年間110万円を超えないように管理する
- 将来的に契約者変更を行う場合は、手続き時期と残高を確認する
- 税務署から質問を受けた際に説明できるよう記録を残す
税金面でのトラブルを避けるには、名義と実際の支払者を一致させるのが最も安全です。
まとめ
今回のケースでは、義父が負担した掛金は年間12万円ずつであり、贈与税の基礎控除(110万円)を超えていないため、贈与税は発生しません。名義変更を行う場合も、贈与扱いにはなるものの、課税対象になる可能性は低いと考えられます。
ただし、今後のトラブルを防ぐためには、最初から娘の夫を契約者・被保険者として設定し、義父の援助を「年間110万円以内の生活支援の範囲」として位置づけておくのが最も無難です。


コメント