精神障害者に対する社会の制度や認識は、時代とともに大きく変化してきました。特に、障害年金や雇用義務の制度は過去には明確でなかった部分も多く、現在のような基準が整備されたのは比較的最近のことです。この記事では、精神障害者への年金制度と雇用制度の変遷を歴史的背景とともにわかりやすく解説します。
精神障害者という概念は昔からあったのか?
精神障害そのものは、古代から存在が認識されていました。たとえば古代ギリシャの医師ヒポクラテスは「ヒステリー」「メランコリー」など精神症状に分類される概念を既に提唱しており、日本でも江戸時代に「狂人」「心病(しんやまい)」と呼ばれる人々が文献に登場しています。
ただし、精神障害者=福祉的な支援が必要な存在という近代的な理解が広まったのは20世紀以降であり、それまでは家族や地域共同体の中で隔離されるような扱いを受けることが一般的でした。
障害年金制度における精神障害の扱いは?
日本の障害年金制度は1942年の「恩給制度」や、1961年の国民年金法施行により整備が進みましたが、精神障害が明確に対象とされたのは1980年代以降といわれています。
制度が整う以前は、身体障害者が主な対象であり、精神障害者への給付は曖昧か、診断基準も不明瞭でした。給付額が「高額だった」というより、対象から除外される傾向が強く、申請自体が難しかったという点に注意が必要です。
精神障害者の雇用義務はいつから明文化された?
雇用に関しても、かつては「身体障害者」や「知的障害者」が中心であり、精神障害者は長らく対象外でした。
精神障害者が「障害者雇用促進法」によって雇用義務の対象となったのは、2018年4月1日からです。それ以前は、精神障害者の雇用は努力義務にとどまり、法定雇用率の算定からも除外されていました。
事例:2017年までは「身体・知的障害者」で法定雇用率2.0%を算定、2018年以降は精神障害者を含めて2.2%に。
障害年金の金額は時代で変わったのか?
障害年金の金額は「高額になった」わけではなく、制度整備によって精神障害者が対象になった結果、ようやく支給されるようになったという流れです。
現在は、障害等級2級で年額約78万円〜100万円程度(国民年金・厚生年金の加入状況により異なる)が基準です。過去には精神障害で年金を受けること自体が難しかったため、支給額の比較自体ができない時代が長くありました。
現代における支援制度と今後の課題
現在では、精神障害者保健福祉手帳や障害年金、就労継続支援(A型・B型)など、さまざまな制度が用意されています。しかし、就労支援や職場理解、年金審査の地域差など、制度の実効性にはばらつきがあるというのが現状です。
また、障害者差別解消法の改正により、精神障害に関する合理的配慮も義務化される流れが加速しています。
まとめ:精神障害者への制度整備は“新しい”もの
精神障害者は昔から社会に存在していましたが、福祉・雇用・年金の制度的な支援は1980年代以降にようやく整い始めたという歴史があります。
年金額が「高額だった」わけではなく、そもそも支給対象になりづらかったというのが実情です。今後も制度のさらなる整備と、精神障害に対する社会的理解の深化が期待されます。
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