長期間にわたって積み立てた個人年金。いざ払込が終わって据置期間に入ると、目の前の解約返戻金が魅力に感じる方も少なくありません。とはいえ税金や将来の年金受取額を考えると、一歩踏み出すのをためらうこともあるでしょう。この記事では、個人年金保険を解約する際に押さえておくべき税務や損益分岐点について、具体例を交えて解説します。
まずは契約内容と数値の確認を
例えば、23歳時に一時払いで105万円を支払った契約があり、60歳時点での解約返戻金が240万円とのこと。年金受取は65歳から年間18万円、10年間確定+終身型という条件です。
このケースでは、5年間の据置を経て年金を受け取れば、18万円×10年で180万円、仮に80歳まで生きるとすると追加で15年分=270万円、計450万円となります。
解約時の課税と年金受取時の課税の違い
解約返戻金として240万円を一括で受け取ると、「一時所得」として課税されます。計算式は以下の通りです。
- 一時所得=(解約金240万円-払込保険料105万円-特別控除50万円)=85万円
- 課税対象額=85万円の1/2=42.5万円
- 所得税・住民税率が合計20%の場合、税額は約8.5万円
一方で、年金受取にした場合は「雑所得」として毎年の年金額から必要経費(年金原資)を控除して課税されます。1年あたりの課税額は比較的少なく、節税効果が見込める場合も。
「損」か「得」かは目的と状況次第
例えば今後の医療費や急な出費に備え、今すぐ現金化が必要であれば解約は選択肢になります。反対に、公的年金以外に安定した収入を得たい方や長生きのリスクヘッジを考える方には、終身年金は非常に有効です。
また、税金だけでなく、介護保険料や健康保険料、住民税にも影響する可能性があるため、慎重な検討が求められます。
「終身型」の強みとその価値
終身年金型は、長生きするほどに受取総額が増える仕組みです。平均寿命を超えて生きた場合、年金として得られる金額は解約返戻金の2倍以上になるケースも。
また、老後の生活でありがちな「資金の枯渇」リスクを避ける意味でも、毎年安定して入ってくる年金は心強い存在となります。
個別相談でより精緻な判断を
税金や社会保険料への影響は年収やその他の資産状況によって変わるため、ファイナンシャルプランナーや税理士への相談が安心です。特に、年金受給開始のタイミングやライフプラン全体を考慮したうえでの判断が大切です。
まとめ:解約は一時の安心、継続は将来の安定
個人年金の解約は、確かに即時の大きな現金を得られる魅力があります。しかし、税金負担と老後資金の観点から見ると、継続受取のほうが長期的にはメリットが大きい場合もあります。
「何のために年金を契約したか?」を改めて見つめ直し、現在と未来のバランスをとった判断をすることが最も重要です。
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