現代の銀行は確かに多くの取引をデジタルで処理していますが、それでも赤字になり倒産する可能性があります。この記事では「銀行が赤字になるとはどういうことか?」について、会計のしくみや信用リスクの視点から丁寧に解説します。
銀行の役割と利益構造
銀行の本業は、預金を集めてそれを企業や個人に貸し付け、その金利差(利ざや)で利益を出すことです。たとえば、預金者に0.01%の利息を払って、企業に1.5%の金利で貸し出すことで、差額が銀行の収益になります。
また、投資信託や住宅ローンなどの手数料収入も重要な収益源です。つまり、銀行はただ「数字を書き換える」だけで運営されているわけではなく、実際に金融資産と負債を管理しており、そこに赤字リスクが潜んでいます。
赤字の原因とは?
銀行が赤字になる主な要因は、以下のとおりです。
- 貸倒れリスク:貸し付けたお金が返ってこない(企業倒産・自己破産など)
- 金利差の縮小:ゼロ金利政策などで利ざやが取れなくなる
- 運用損失:保有している国債や株式の評価が下がる
- 不良債権の増加:延滞や返済不能なローンが膨らむ
これらは「帳簿上の数字」にも反映されるため、仮に現金を動かさないデジタル処理であっても、帳簿が赤字であれば企業として経営困難になります。
なぜ「通帳の数字」を動かすだけでは解決しないのか
通帳の数字は「預金者の銀行に対する債権」を示すものであり、銀行はそれを現金化する責任を負っています。たとえば、100万円預けている人が全額引き出したいときに、銀行に現金や準備金がなければ応じられません。
銀行はこのような事態に備えて、預金準備金(日本銀行への預け入れ)や、保有資産の流動化を行っています。しかし、赤字が続いて資本が棄損されると金融庁から業務改善命令が出されたり、最悪の場合は破綻します。
銀行が破綻するとどうなるか?
銀行が経営破綻した場合、預金保険制度により「1,000万円まで+利息」は保証されますが、それ以上は保護されません。過去には「北海道拓殖銀行」や「長銀(日本長期信用銀行)」などの破綻事例があります。
こうした事例は、「数字の改ざん」ではなく実体としての資本不足が原因です。数字だけで解決できるなら、資本主義社会の金融機関はもっと簡単な仕組みになっていたはずです。
デジタル化しても「信用」の基盤は変わらない
近年はフィンテックやオンラインバンキングが進んでおり、数字の移動は瞬時に行われます。しかし、銀行はあくまで「信用創造」によって経済を動かす存在であり、その基盤には厳格な資本管理とリスク評価があります。
通帳上の数字は「現実の資産・負債の一部表現」にすぎず、それを操作するだけでは赤字も倒産も回避できないというのが現実です。
まとめ:銀行が赤字になる本当の意味
銀行が赤字になるとは、資産よりも負債が上回り、利ざやや手数料収入では補填できない損失を抱えている状態を指します。通帳の数字を書き換えるだけでは経営は成り立ちません。
数字の裏には「現金」や「貸付金」、「資本」が動いており、それが回らなくなれば経営破綻につながるのです。銀行は見かけよりもはるかに複雑で、責任ある金融機関であることを理解しておきましょう。
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