仕事中のケガに対して「労災保険」が適用されるのはよく知られていますが、実は企業によってはそれに加えて“もうひとつの保険”に加入している場合があります。これは、自賠責保険に対する任意保険のような位置づけで、より手厚い補償が受けられる仕組みです。本記事では、その保険の正式名称と概要、労災との違い、活用のポイントを解説します。
労災保険の役割と限界
労災保険(労働者災害補償保険)は、業務中や通勤途中のケガ・病気・障害・死亡に対して、治療費や休業補償を行う国の制度です。
ただし、労災保険はあくまで「最低限の保障」であり、慰謝料や精神的苦痛に対する補償は含まれていません。そのため、重度の後遺障害や家族への補償などには限界があります。
企業が任意で加入する“上乗せ保険”の正体
多くの企業では、労災保険だけでは不足する部分をカバーするために、「労災上乗せ保険」(正式名称:「労働災害総合保険」「業務災害補償保険」など)を任意で契約しています。
これは民間保険会社(AIG損保・東京海上日動・損保ジャパンなど)が提供しており、労災保険とセットで使われることが多く、「ニイホケン(任意保険)」とも俗称的に呼ばれることがあります。
どんな補償内容があるのか?
労災上乗せ保険には、以下のような補償が含まれています。
- 労災認定時の慰謝料や見舞金
- 労災給付を補完する差額分の補填
- 後遺障害や死亡時の追加一時金
- 休業損害に対する上乗せ給付
企業が独自に設計しているため、金額や内容はバラバラですが、支給額が数十万円〜数百万円にのぼるケースもあります。
支給される条件と申請方法
通常、この保険は「労災保険の認定」が前提となり、労災申請が承認されて初めて支給対象になります。
申請は会社を通じて行い、労災給付決定通知と併せて上乗せ保険の申請書類を提出する必要があります。個人で申請することはできず、会社が契約しているかどうかの確認が第一歩です。
実例:両方から補償を受け取ったケース
例:40代男性作業員が機械作業中に指を切断。労災保険から治療費と休業補償を受給。
→ 会社が加入していた「業務災害補償保険」からも、後遺障害一時金100万円+見舞金30万円を受け取った。
このように、上乗せ保険の存在を知っていたことで、より手厚い補償につながったケースがあります。
会社に確認すべきこと
まずは、会社に「労災以外に業務中のケガに関する民間保険に加入していますか?」と聞いてみましょう。
その際、「労働災害総合保険」や「業務災害補償保険」「団体労災保険」などのキーワードを使うと話が伝わりやすくなります。
まとめ
業務中のケガに対しては、労災保険だけでなく、企業が任意で加入する「労災上乗せ保険」が存在します。この保険に加入していれば、追加の一時金や慰謝料などの補償を受け取れる可能性があります。
- 労災保険は最低限の補償
- 上乗せ保険(業務災害補償保険等)がある企業も多い
- 申請は会社を通じて行う必要あり
まずはご自身の勤務先に、「業務中のケガに関する任意保険はあるか」を確認してみましょう。知らないままで損をしないためにも、しっかりと確認することが大切です。
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