社会保険の手続きの中でも「月額変更届(いわゆる月変)」は、保険料に直結する重要なイベントです。特に等級が2等級以上変わる場合、被保険者にも会社にも影響があります。では、月変のタイミングで退職者が出た場合、その人に対して新しい保険料が発生するのかどうか。本記事では、月変のルールと退職との関係をわかりやすく解説します。
月額変更届(月変)とは?
月額変更届は、固定給が大幅に変動したときに提出するもので、通常は4月〜6月の3カ月間に支給された報酬を元に判断します。2等級以上の増減がある場合、8月分(9月納付)から標準報酬月額が変更されます。
たとえば、4月・5月・6月の報酬が急増し、現行の等級と2等級以上の差があれば、8月から新しい等級・保険料が適用されるのです。
月変後に退職した場合の保険料の扱い
月変による新しい保険料は「8月分の保険料から」適用されます。したがって、もし対象者が7月末で退職する場合、その人には月変による新しい保険料は適用されません。
なぜなら、社会保険料は「在籍している月」に対して発生するためです。7月退職者は8月分の社会保険料を負担する義務がないため、月変が適用される前に資格を喪失していることになります。
退職日によって請求が変わるケースとは?
社会保険は「月末時点で在籍しているかどうか」で判断されます。たとえば、以下のように扱いが変わります。
- 7月31日付で退職:8月は在籍していない → 月変適用なし
- 8月1日以降に退職:8月分の保険料が発生 → 月変適用あり
つまり、退職日が7月中か8月以降かで、保険料の等級変更が実際にその人に影響を及ぼすかどうかが決まるのです。
実務対応:給与計算や請求での注意点
実務では、月変対象者が7月退職予定であることがわかっている場合、届出を出すかどうか慎重に検討することがあります。対象者が退職し、実際には月変が適用されないにも関わらず、会社側が誤って新等級で保険料を計算してしまうと、差額の返金や訂正処理が必要になります。
そのため、給与ソフトや社会保険担当者は、退職日と月変の適用月の関係を正確に把握しておくことが重要です。
よくある誤解とトラブルを防ぐために
「月変したからその等級で計算すればよい」と考えるのは早計です。実際には、在籍の有無と月末時点の資格が大きく影響します。また、保険料の立て替えや精算を従業員に誤って求めてしまうケースもあります。
こうしたトラブルを防ぐには、毎月の人事異動や退職予定の情報と、月変の提出予定を連携させておくことが必要不可欠です。
まとめ:月変の影響は「8月在籍者」のみが対象
月額変更届は重要な手続きですが、その影響を受けるのは8月以降に在籍している従業員だけです。7月中に退職する方には、新しい等級は適用されず、当然保険料も請求されません。
月変の運用を誤ると、保険料過徴収や返金対応が必要になるため、実務では退職日や在籍状況の確認を徹底することが大切です。正しい手続きで従業員にも会社にも安心な対応を心がけましょう。
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