老齢基礎年金を繰り上げて受給することは可能ですが、その分、年金額が一生涯にわたって減額される点に注意が必要です。特に、受給開始年齢が「月単位」で扱われる点を知らずに早まると、想定以上の減額となることもあります。この記事では、老齢基礎年金の繰り上げの仕組みと具体的な計算方法、注意点について解説します。
繰り上げ受給の基本と減額率
老齢基礎年金の繰り上げ受給は、原則として65歳から受給開始ですが、最も早くて60歳から繰り上げることができます。ただし、1ヶ月繰り上げるごとに0.4%減額される仕組みとなっており、繰り上げた期間に応じて年金額が生涯にわたって減ります。
2022年4月からはこの減額率が変更され、それ以前は0.5%だったのが、現在は月0.4%に軽減されています。
計算式:繰り上げ減額率の求め方
減額率の基本的な計算式は以下のとおりです。
減額率(%)= 0.4 × 繰り上げ月数
たとえば、63歳0ヶ月で繰り上げるとした場合、65歳まで24ヶ月あるので、減額率は0.4 × 24 = 9.6%となります。
では、質問にもあるように「62歳6ヶ月」で繰り上げた場合はどうでしょうか。65歳まで残りは30ヶ月なので、減額率は
0.4 × 30 = 12.0%の減額になります。
月単位で減額が決まる仕組み
繰り上げ受給の判断単位は「年齢」ではなく、「月単位」です。たとえば「62歳6ヶ月」は「63歳扱い」にはなりません。あくまで、65歳まであと何ヶ月あるかが重要で、1ヶ月でも早ければその分だけ減額率が増します。
つまり、62歳6ヶ月=65歳まで30ヶ月→0.4×30=12%減額であって、「63歳」として計算されることはありません。
繰り上げのデメリットと注意点
繰り上げ受給にはいくつかのデメリットがあります。
- 一生減額された金額で固定される
- 遺族年金などとの調整が発生する場合がある
- 障害年金との併給制限がある
また、繰り上げ請求をした後に取り消すことは原則としてできないため、慎重な判断が求められます。
生活設計上の都合で早めの年金が必要な場合もありますが、退職金や他の収入と組み合わせることで繰り上げを避ける選択肢も検討しましょう。
シミュレーション例:年金額の違い
たとえば、65歳受給開始で年額78万円(満額)を受け取る予定だった人が、62歳6ヶ月で繰り上げた場合のシミュレーションです。
- 減額率:0.4 × 30 = 12%
- 実際の受給額:78万円 ×(1 – 0.12)= 68万6,400円/年
これが生涯続くため、仮に90歳まで生きた場合、合計受取額で100万円以上の差が出るケースもあります。
まとめ:繰り上げ受給は月単位の判断と計算がカギ
老齢基礎年金の繰り上げは、1ヶ月ごとに0.4%の減額がされ、たとえ「62歳6ヶ月」でも月単位で30ヶ月早いとカウントされ、12%の減額となります。63歳として切り上げて計算されることはないため、受給タイミングの判断は慎重に行うことが重要です。ライフプランに合わせて必要な年金額と減額率をシミュレーションし、自分に合った受給開始年齢を検討しましょう。
コメント