がんと診断されたとき、治療費の負担がどれほどかかるのかは誰もが不安に感じるポイントです。インターネット上では「がん治療費〇百万円」といった大きな数字が並ぶこともありますが、実際の自己負担額とは異なるケースがほとんどです。本記事では、がん治療にかかる費用を現実的な視点で解説し、公的制度の仕組みや負担軽減のポイントを紹介します。
がん治療の費用構造とは?
がん治療には、主に次のような費用がかかります。
- 診察料・検査費
- 手術・入院費
- 放射線治療や化学療法
- 薬剤費(抗がん剤など)
- 先進医療・自由診療の費用
しかし、これらの多くは健康保険の対象であり、自己負担は通常「3割」または「2割(高齢者)」に抑えられています。
自己負担額の実例:保険適用の場合
たとえば、以下のようなケースが現実的な金額です。
- 入院+手術+抗がん剤治療を受けた1か月の医療費総額が150万円の場合 → 自己負担3割で45万円
- ただし、「高額療養費制度」により自己負担額はさらに軽減され、実際の支払いは約8万円前後に抑えられます(所得により上限は変動)
つまり、ネット上で見かける「10割の金額(総額)」は保険未適用時の話であり、実際に支払う金額とは大きく異なることを理解しておく必要があります。
高額療養費制度で安心できる理由
「高額療養費制度」は、1か月に支払う医療費の自己負担が一定額を超えた場合、その超過分を払い戻す制度です。年収や年齢に応じて上限が異なります。
たとえば、年収500万円程度の方であれば、自己負担の上限はおよそ87,430円/月(令和6年現在)です。これにより、たとえ高額な治療を受けても、家計への影響は最小限に抑えられます。
保険適用外の費用にも注意
ただし、保険適用されない「自由診療」や「先進医療」を選んだ場合、全額自己負担となるため注意が必要です。
- 陽子線治療:約250万円(先進医療 → 自費)
- 免疫療法:内容により100万円以上
- セカンドオピニオン料:1回2万~5万円程度
これらの費用は、「先進医療特約」などの民間保険で備えることが可能です。
生活費や収入減も含めた総合的な負担
医療費だけでなく、治療中の収入減や通院交通費、食事代なども含めると、トータルで月数万円~10万円以上の支出が増えることがあります。
このような間接的負担に備えるには、医療保険の「入院給付金」「通院給付金」「がん診断一時金」などを活用するのが一般的です。
まとめ
がん治療費の“実際の負担”は、公的保険制度の活用により大幅に軽減されます。「がん=何百万円の負担がかかる」というイメージは、保険適用外の金額を前提とした誤解であることも多いです。正確な制度理解と、必要に応じた民間保険の活用で、万一のときも落ち着いて対応できる備えをしておきましょう。
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