新たにアルバイトやパートタイマーを雇用する際、社会保険の加入義務が発生するかどうかを判断するポイントのひとつが「標準報酬月額」です。特に88,000円という金額を境に保険料の有無が分かれることもあり、混乱しやすい制度です。今回は社会保険加入時の標準報酬月額の算出方法と、加入タイミングの基準についてわかりやすく解説します。
標準報酬月額とは?社会保険料を決める基準金額
標準報酬月額とは、健康保険や厚生年金保険の保険料を算出する際の基準となる月収額のことで、実際の給与金額を等級表に当てはめて決まります。報酬には基本給だけでなく、通勤手当や残業代などの手当も含まれます。
たとえば、月の給与が88,000円の場合、標準報酬月額としては「第8等級:88,000円」が適用されることになります。これが社会保険料の計算の基礎となるのです。
月額88,000円を超えると原則社会保険加入が必要
厚生年金や健康保険の加入条件にはいくつかありますが、そのうちのひとつが「月額報酬88,000円以上(年収約106万円以上)であること」です。
ただし、企業の規模(従業員数)や勤務日数・時間、雇用期間の見込みなども影響します。たとえば週20時間以上かつ2か月以上の勤務見込みがあるなどの条件も満たす必要があります。
4月〜6月の平均で決まる「定時決定」とは?
社会保険の標準報酬月額は原則として、毎年4月、5月、6月の給与を元に算出され、これを「定時決定」と呼びます。この3か月の給与平均額を等級表に当てはめて、7月に会社が提出する「報酬月額算定基礎届」に基づき、9月から新しい標準報酬月額が適用されます。
たとえばフルタイム勤務者が4月〜6月に安定して月10万円の給与を受け取っていた場合、その平均額で等級が決まります。
4月〜6月に入社していない場合は「随時決定」や「月変」
4月〜6月以外の月に入社した場合、定時決定が適用できないため、「資格取得時決定」によって最初の標準報酬月額が決まります。これは最初に支払われる給与(通常は初月)の金額をもとに算出されます。
また、その後で著しい給与変動(増減)があり、3か月連続で平均額が大きく変わった場合には、「随時改定(いわゆる月変)」によって標準報酬月額が変更されることもあります。
2か月以上の勤務見込みがポイントになる理由
社会保険の適用では、勤務形態に加えて「2か月以上継続して勤務する見込みがあるか」が重要な判断基準となります。短期バイトなどで2か月未満の契約であれば原則加入は不要です。
ただし、最初2か月契約でも延長が繰り返されて実質的に2か月以上働いた場合には、遡って加入させられるケースもあります。企業としても、初期契約時点での見込みを慎重に判断する必要があります。
まとめ:入社時期や勤務見込みで変わる社会保険の扱い
社会保険の加入や標準報酬月額の決定方法は複雑に見えますが、基本を理解すれば判断しやすくなります。88,000円を超える給与が見込まれる場合は、入社月にかかわらず社会保険加入の可能性があります。その際、初月の報酬額から標準報酬月額が設定され、翌年6月まで基本的にその額が使われます。
人を雇用する立場でも、自分が働く立場でも、正しい知識を持って制度を活用しましょう。
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