近年、パートやアルバイトなどの短時間労働者を取り巻く「106万円の壁」への注目が高まっています。特に、厚生年金を受給しながら配偶者の扶養内で働く人にとって、この制度改正がどのような影響を及ぼすのかは気になるポイントです。この記事では、制度の概要から実際の影響、今後の選択肢までを丁寧に解説します。
「106万円の壁」とは何か?
「106万円の壁」とは、年収106万円を超えた一部のパート・アルバイトが勤務先で厚生年金・健康保険(社会保険)への加入義務が発生する制度を指します。これは勤務先の従業員数が51人以上で、週20時間以上の勤務など一定の条件を満たす場合に適用されます。
この制度の目的は、短時間労働者にも社会保険を広げることで、将来的な年金額の底上げを図ることにあります。2022年、2024年と段階的に適用拡大されてきました。
厚生年金受給者が扶養内で働く場合の影響
年金受給者がパートなどで働き、扶養内(配偶者の健康保険の被扶養者など)であっても、上記条件を満たす場合は社会保険への加入対象になります。つまり、厚生年金を既に受給していても、一定の労働条件に達すれば、新たに厚生年金・健康保険料を支払う義務が生じるのです。
実際には、年金受給者が社会保険に加入すると、以下のような影響があります。
- 年金受給額が在職老齢年金制度により調整される可能性
- 健康保険料と厚生年金保険料の負担増
- 新たな厚生年金加入により将来の加算対象(再計算)になる可能性
扶養の意味と社会保険上の取り扱い
一般的に「扶養」と言うと、税法上または健康保険上の概念があります。税法上の扶養では年間103万円以下、健康保険上の扶養では130万円未満が目安ですが、社会保険の「106万円の壁」は別のラインで管理されています。
つまり、扶養内であっても勤務条件が制度要件を満たせば社会保険加入義務が発生するという点に注意が必要です。
具体的な影響のケーススタディ
たとえば、65歳以上で厚生年金を受給しているAさんが、週25時間・月収9万円で従業員100人規模のスーパーで働いていたとします。年収は約108万円で「106万円の壁」を超えているため、そのスーパーの条件によっては厚生年金と健康保険の加入義務が発生します。
この場合、Aさんは自身で保険料を支払うことになりますが、再度加入することで将来的な年金額が増える可能性もあります。
どう対応すべきか?回避策やポイント
「扶養内で働きたい」「保険料を負担したくない」と考える方は、以下のような点を検討しましょう。
- 勤務時間を週20時間未満に調整する
- 従業員数50人以下の事業所で働く(2024年時点では適用除外)
- 年収を106万円未満に抑える(ただし、交通費なども含まれる場合があるため注意)
ただし、社会保険加入には将来的な年金加算というメリットもあるため、短期的な負担と長期的な利得を総合的に判断することが大切です。
まとめ:扶養内の年金受給者も対象になることがある
「106万円の壁」撤廃・拡大によって、厚生年金を受給中であっても、扶養内の労働者が新たに厚生年金・健康保険の加入対象となるケースが増加しています。
年金の在職調整や保険料負担の影響を正しく理解し、必要に応じて勤務先や社会保険労務士に相談することが、今後の生活設計に役立ちます。特に年収調整や勤務条件の見直しは、実務面で有効な対策となるでしょう。
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