近年、年金制度の見直しとして「厚生年金の底上げ」が議論されることが増えてきました。これは特に低所得層の厚生年金受給者の年金額を引き上げることを目的とした制度ですが、一見すると「国民年金だけの人のほうが得をするのでは?」といった疑問が浮かぶこともあるでしょう。この記事では、厚生年金の底上げが何を意味するのか、誰にどのような影響があるのか、そして国民年金加入者との関係をわかりやすく解説します。
厚生年金の底上げとは?
「厚生年金の底上げ」とは、主に老後の生活が困窮しやすい低年金者に対して、一定額の年金を上乗せする仕組みです。これは制度的に「在職中の給与が低かった人」や「被保険者期間が短かった人」などが対象になります。
厚生年金は、加入期間や報酬額に応じて受給額が決まるため、非正規雇用者や短時間労働者などは受給額が少なくなる傾向があります。その格差を緩和するための調整策として、「底上げ(加算)」が検討されています。
厚生年金と国民年金の違いを確認
厚生年金と国民年金の主な違いを以下にまとめます。
項目 | 厚生年金 | 国民年金 |
---|---|---|
加入対象 | 会社員・公務員など | 自営業・フリーランス・無職など |
保険料 | 収入比例(会社と折半) | 定額(全額自己負担) |
受給額 | 国民年金+報酬比例部分 | 基礎年金のみ |
つまり、厚生年金加入者はもともと国民年金(基礎年金)の上に「報酬比例部分」が加算されており、受給額は平均して高くなります。
厚生年金の底上げと国民年金の関係
「底上げ=国民年金より得では?」と感じる理由の一つに、一部の厚生年金受給者が、国民年金のみの受給者と同水準かそれ以下の年金しか受け取れないという逆転現象があります。
たとえば、短時間パート勤務で収入が極端に少なかった人は、厚生年金に加入していても支給額がかなり少なくなります。こうした人たちが、長年きちんと国民年金を支払ってきた人よりも受給額が低いことが、制度の「不公平」として議論されてきました。
このため、底上げは厚生年金加入者の中でも“非常に低年金の人”を対象に行われ、国民年金受給者よりも不当に低くなる状況を是正するものです。
国民年金の人が損になることはあるのか?
厚生年金の底上げによって、直接的に国民年金受給者が不利益を受けるわけではありません。ただし、以下のような声も存在します。
- 「真面目に40年間国民年金を納めても、厚生年金底上げの人より少ない」
- 「報酬に応じた仕組みなのに、補助で厚生年金が優遇されるのは不公平」
これらは制度への不満というよりも、「公平性」や「納得感」の問題です。ただし、底上げされても受給額が国民年金レベルに並ぶ程度であることが多く、長年国民年金を納めてきた人の受給額が下回ることは一般的にはありません。
今後の制度改正と将来の動き
将来的には、「基礎年金の底上げ」や「全体的な最低保障年金制度の導入」なども議論されています。こうした方向性が進めば、国民年金のみの人にも恩恵が出てくる可能性があります。
また、マクロ経済スライドや物価・賃金変動の影響も含めて、年金全体の給付水準は調整されていくため、特定の層だけが得をし続ける構造にはなりにくいと考えられます。
まとめ
厚生年金の底上げは、低年金となる厚生年金加入者に対して行われる制度的な補強策であり、国民年金の受給者に不利益をもたらすものではありません。むしろ、年金制度の中の格差是正という観点から導入されるもので、国民年金だけの人とのバランスを取る一環でもあります。今後は国民年金受給者向けの底上げ策も期待されるため、制度の動向には継続的な注目が必要です。
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