大学院への進学を考える際、多くの人が直面するのが「奨学金の返済は社会人になってから本当にしんどいのか?」という不安です。返済額の大きさや収入とのバランス、精神的な負担など、実際に社会人になった後でしか見えないリアルな声をもとに、その実態と向き合い方を解説します。
奨学金返済の基本:月額と総額のイメージをつかむ
まずは、実際に返す金額の規模感を把握することが大切です。たとえば、日本学生支援機構(JASSO)の第二種奨学金(利子あり)で大学4年+大学院2年、月額8万円を借りた場合。
- 借入総額:約576万円
- 返済期間:20年(240回)
- 月々返済:約30,000円前後(利子込み)
これだけで「手取り20万円台の新社会人」にとっては重い固定費になるのが現実です。
社会人1〜3年目は特に負担が大きい
新卒1〜3年目は手取りが低く、家賃・交通費・生活費・税金と奨学金返済を同時にこなす必要があります。以下は一例です。
月の出費項目 | 金額 |
---|---|
家賃 | 60,000円 |
食費・光熱費 | 30,000円 |
奨学金返済 | 30,000円 |
通信費・その他 | 15,000円 |
このように、毎月の可処分所得がほとんど残らないという状況も珍しくありません。
精神的に“奨学金が心に引っかかる”という現実
奨学金の返済は、金銭的な負担以上に「自由を奪われるような心理的圧力」を感じることもあります。
たとえば、「転職やキャリアチェンジにリスクを感じて動けない」「ライフイベント(結婚・出産)を後回しにしてしまう」など、奨学金=借金であるという事実が、行動を制限する材料になることもあります。
奨学金返済を乗り切るための工夫と制度
辛いのは事実ですが、返済を少しでも楽にするための方法もあります。
- 所得連動返還型(新制度):年収が一定額以下なら返済額が減る制度
- 繰上げ返済・ボーナス返済:利息を軽減するために計画的に早期返済
- 返還期限猶予制度:失業・病気などで返済困難な場合の一時停止
これらを理解し、事前に備えることが精神的な余裕につながります。
大学院進学の価値と、借金とのバランス
すべての大学院進学が損かというと、決してそうではありません。研究職・専門職・海外キャリアなどでは、大学院卒が生涯賃金や就職機会の面で有利に働くこともあります。
「なぜ大学院に行きたいのか」「その分野で将来的にどう収入を得て返済していくのか」を自分の中で明確にし、投資としてリターンが期待できるなら、奨学金は“借金”ではなく“自己投資”になり得ます。
まとめ:奨学金返済は確かにしんどい。でも備えと意義があれば選べる道
① 奨学金返済は金額以上に“固定費の重さ”と“心理的負担”が大きい
② 特に社会人初期の生活に影響しやすく、可処分所得が制限される
③ 制度を活用し、繰上げ返済や猶予制度でコントロールする工夫が必要
④ 大学院進学の目的が明確で、将来への自己投資になるなら十分に検討の価値あり
辛い返済があるからこそ、「それでも行く価値があるか」を考えることが、進学に対する本当の覚悟になります。
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