パートやアルバイトとして働く人が社会保険に加入するかどうかの基準としてよく耳にする「月収88,000円」。この金額には法的な根拠があり、企業と働く人にとって重要な判断材料になっています。この記事では、その設定の背景や意味、どんな人が対象になるのかをわかりやすく解説します。
88,000円の基準は「年収106万円未満」の月割り
月収88,000円という金額は、年収106万円を12ヶ月で割った目安額です。この106万円という数字は、社会保険加入の義務が発生するボーダーラインとして厚生労働省が定めたものです。
例えば、週20時間以上働き、かつ年収が106万円以上見込まれる場合、一定条件を満たすと社会保険の被保険者(厚生年金・健康保険)となる可能性があります。
なぜ106万円なのか?その背景と制度改正の経緯
元々、社会保険の加入義務は「週30時間以上」のフルタイムに近い勤務に限定されていました。しかし、2016年の法改正により、一定規模以上の企業で短時間労働者(週20時間以上)も社会保険の対象とされるようになりました。この際、基準のひとつとして設けられたのが「月88,000円(年106万円)以上」という収入基準です。
この基準は「被扶養者の枠を超える収入」としても機能し、税制や保険制度に影響を及ぼします。
どのような働き方が対象になるのか
88,000円以上の月収で以下の条件すべてを満たすと、社会保険の加入対象となります。
- 週の所定労働時間が20時間以上
- 月収88,000円以上
- 勤務期間が2ヶ月以上見込まれる
- 学生ではない
- 従業員数が51人以上の企業に勤務(2024年10月以降は従業員規模要件がさらに緩和予定)
たとえば、パートで月9万円稼いでいる主婦が51人以上の会社で働いている場合、社会保険への加入が必要になることがあります。
パートでも加入すべき?負担とメリットの比較
社会保険に加入すると、健康保険料や厚生年金保険料の一部が給与から天引きされますが、その一方で大きなメリットもあります。たとえば。
- 将来受け取る年金額が増える
- 健康保険の給付(傷病手当金、出産手当金など)が受けられる
- 失業保険や雇用保険の制度と連携しやすい
長期的な安定を考えると、加入は有利なケースが多いです。
よくある誤解と注意点
「バイトなのに保険?」「家計が苦しくなるのでは?」という不安の声もあります。しかし、会社が保険料の半分を負担してくれるため、個人で国民年金や国民健康保険を払うよりもトータルで有利になることがほとんどです。
また、88,000円は「標準報酬月額」の下限ラインであり、実際には交通費なども含めた合計金額で判断される点にも注意が必要です。
まとめ:88,000円は法的根拠のある重要な指標
月収88,000円という基準は、単なる目安ではなく、社会保険制度上の明確なラインです。制度の背景を理解し、自分の働き方と照らし合わせて正しく判断することが、将来への備えにもつながります。
パートやアルバイトでも、「働き方の選択肢を広げる」第一歩として、社会保険の加入基準はしっかりと把握しておきましょう。
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