突然の入院や手術などで高額な医療費がかかったとき、家計の負担を大幅に軽減できる「高額療養費制度」はとても心強い制度です。しかし、実際にいくらまで自己負担すればいいのか、その目安を把握しておくことは医療保険を選ぶ上でも大切です。この記事では、所得区分「年収約370万円~770万円程度(区分ウ)」を前提に、限度額の計算例やシミュレーションをご紹介します。
高額療養費制度の基本構造をおさらい
高額療養費制度とは、1カ月間にかかった医療費(保険適用後の自己負担分)が一定額を超えた場合、その超えた分が後から払い戻される制度です。計算式は所得区分によって異なります。
年収約370万~770万円の場合(区分ウ)は、以下の式で自己負担の上限額が算出されます。
80,100円 +(医療費 – 267,000円)×1%
実際にいくらかかる?シミュレーションで目安を知ろう
たとえば、入院と手術で保険適用後の3割負担の医療費が50万円かかったと仮定してみます。
自己負担上限額=80,100円+(500,000円−267,000円)×1%=80,100円+2,330円=82,430円
つまり、実際に支払う額は82,430円程度に抑えられ、それ以上の部分は後日返還されるのです。
よくある医療費例で考える:どの程度の医療費が対象?
以下は保険適用後の支払額(3割負担分)です。あくまで目安ですが、以下のようなケースで制度の恩恵を受けやすくなります。
- 盲腸の手術・5日入院:約12〜15万円
- 腰椎ヘルニア手術・7日入院:約18〜22万円
- 白内障手術・日帰り:約5〜6万円(高額療養費制度対象外の場合あり)
一般的には、10万円以上の医療費が発生した場合、高額療養費制度の対象となる可能性が高いです。
差額ベッド代や食事代は対象外
高額療養費制度の対象になるのは、あくまで「保険適用後の自己負担分」のみです。次のような費用は対象外となります。
- 差額ベッド代(個室など)
- 食事療養費(1食460円など)
- 先進医療費
そのため、医療保険を選ぶ際はこれらの費用を補填する目的での保障内容も重要になります。
医療保険の選び方に活かすポイント
高額療養費制度があるからといって、医療保険が不要というわけではありません。制度には申請が必要で返還にも時間がかかるため、一時的な立て替え負担が大きいのも事実です。
民間の医療保険は、入院給付金や手術給付金で即時の現金補填を目的に加入するのが現実的です。「日額5,000円×10日=5万円」など、ちょっとした出費にも対応できます。
まとめ:自己負担の目安を知れば備えが変わる
高額療養費制度は公的なセーフティネットとして非常に優れていますが、その制度の仕組みや自己負担の目安を正しく理解することで、無駄なく医療保険を検討できます。
年収370〜770万円であれば、自己負担上限は月8〜9万円台が目安。この知識をもとに、貯蓄と保険のバランスを見直してみましょう。
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