築年数が古いビルの売却が決まり、火災保険が売却直前に切れるというケースは意外と多くあります。このタイミングで火災保険を更新すべきか、それとも無保険期間を受け入れてもよいのか、判断に迷う人も多いでしょう。今回は、そのリスクと対策について解説します。
火災保険の目的とカバー範囲を再確認
火災保険は「建物」と「家財」などの損害に対する補償が中心であり、通常は第三者への損害(たとえば延焼による隣家への被害など)は含まれていません。
ただし、損害賠償責任に備える「個人賠償責任保険」や「施設賠償責任保険」などを付帯している場合は例外となることがあります。現在加入中の火災保険がこれらの補償を含んでいるか、証券を確認しておくことが重要です。
売却前の無保険期間に起こる可能性のあるトラブル
売却直前に火災、漏水、倒壊などの事故が起きた場合、補償が受けられなければ、損害額はすべて自己負担となります。
さらに、契約済の買主に引き渡す前に重大な損傷があった場合、契約解除や賠償責任のリスクも否定できません。たとえば台風などによる倒壊で通行人に被害が出た場合、所有者責任を問われる可能性もあります。
売却直前でも加入可能な短期火災保険がある
多くの損害保険会社では1ヶ月~3ヶ月の短期火災保険プランを提供しています。売却予定日が明確である場合、必要な期間だけ補償を確保できるため非常に有効です。
例えば保険料数千円で1000万円以上の補償が受けられるケースもあり、安心感を得られる上、リスクヘッジにもなります。
売買契約の条項も確認を
売買契約には「引き渡し前の損害は売主負担」と明記されているのが一般的です。つまり、9月18日以降から引き渡し前までの間に万一事故が起きた場合、売主が修繕・原状回復の費用を負担する必要があるかもしれません。
契約書の内容を確認し、万が一の事故によって買主が契約を白紙に戻す、または損害賠償を請求してくるリスクに備える判断が必要です。
結論:1ヶ月の空白でも火災保険継続は推奨される
たとえ1ヶ月でも、老朽ビルは事故リスクが高く、短期火災保険への加入は十分に検討する価値があります。特に所有者責任が残る期間であれば、「備えあれば憂いなし」の姿勢が望ましいと言えるでしょう。
売却目前だからこそ、「あと少しだから大丈夫」と油断せず、リスクと補償のバランスを見て慎重に判断しましょう。
まとめ:無保険期間はできるだけ避けるべき
老朽ビル売却において、保険切れから引き渡しまでのわずかな期間でも火災保険の空白があると、思わぬ損害リスクに直面することがあります。
可能であれば短期火災保険に加入し、安全に所有権移転までの時間を乗り切ることが安心への近道です。契約内容や責任範囲も併せて確認し、トラブルの芽は事前に摘んでおきましょう。
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