アルバイトやパートタイムで新たに勤務を始める際、給与の振込先として特定の銀行口座を指定されることがあります。しかし、労働者としては、自身の希望する金融機関の口座を使用したいと考えることもあるでしょう。この記事では、給与振込口座の指定に関する労働者の権利と、円滑な対応方法について解説します。
労働基準法における賃金支払いの原則
労働基準法第24条では、賃金の支払いに関して以下の5つの原則が定められています。
- 通貨払いの原則
- 直接払いの原則
- 全額払いの原則
- 毎月1回以上払いの原則
- 一定期日払いの原則
これらの原則により、賃金は原則として現金で直接労働者に全額支払われる必要があります。ただし、労働者の同意がある場合には、銀行口座への振込も認められています。
給与振込口座の指定に関する労働者の権利
労働基準法施行規則第7条の2では、労働者が指定する本人名義の銀行口座への振込が認められています。つまり、会社が一方的に特定の金融機関の口座を指定することはできず、労働者の同意が必要です。
また、厚生労働省の通達でも、使用者は取扱金融機関を一行に限定せず、労働者の便宜に十分配慮することが求められています。
振込手数料の負担について
賃金の全額払いの原則により、振込手数料を労働者に負担させることは原則として認められていません。振込手数料は、使用者が負担する必要があります。
ただし、労働者の同意があり、労使協定を締結した場合には、振込手数料を労働者が負担することも可能です。この場合でも、給与明細に控除額を明記するなど、適切な手続きが必要です。
円滑な対応方法とコミュニケーションのポイント
指定された銀行口座以外の口座を希望する場合、まずは上記の法的根拠を理解し、冷静に対応することが重要です。以下のようなポイントを押さえて、上司や担当者とコミュニケーションを取ると良いでしょう。
- 自身の希望する銀行口座を使用したい理由を明確に伝える(例:既に他の取引がある、手数料がかからないなど)
- 労働基準法に基づき、労働者が口座を指定できることを説明する
- 会社の手続き上の都合も理解し、協力的な姿勢を示す
このように、法的な権利を主張しつつも、柔軟で協力的な態度を取ることで、円滑な解決が期待できます。
まとめ
給与振込口座の指定に関しては、労働者が自身の希望する口座を指定する権利があります。会社が特定の銀行口座を指定することはできません。また、振込手数料は原則として会社が負担すべきです。これらの法的な権利を理解し、適切なコミュニケーションを取ることで、円滑な労働関係を築くことができます。
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