個人事業の現場では、実際に給与が支払われていないのに「支払ったことにして処理する」といった事例が起こることがあります。今回は、こうした処理が税務署にバレるリスクや、そのまま放置することの問題点、そして正しい対応について詳しく解説します。
青色申告で「支払ったことにしている」処理とは
青色申告をしている個人事業主が、実際には従業員に給与を支払っていないにもかかわらず、帳簿上は支払ったことにして経費処理しているケースがあります。
この処理をしていると、事業者は給与支払い分だけ課税所得が減るため節税になりますが、これは架空経費(いわゆる「粉飾」)に該当する可能性があります。
実際に給与が未払いなら「経費計上」はNG
税法上、給与は「実際に支払ったとき」にのみ経費として認められます。現金主義ではなく発生主義であっても、未払金としての処理は必要ですが、個人事業において「給与」は特に厳格な扱いです。
たとえば、毎月25万円を給与として帳簿に計上しているのに、実際の振込や現金払いがなければ、その経費計上は「虚偽」と見なされる可能性があり、税務調査で否認される対象となります。
「ばれる」可能性は?税務調査のチェックポイント
税務署は主に以下の点から未払い給与を把握します。
- 給与明細や通帳との整合性
- 従業員の申告との照合(年末調整や源泉徴収票)
- 事業主・家族間での「名ばかり給与」の有無
とくに青色専従者給与など、家族に対する給与については税務署も強く関心を持っています。「払っていないのに経費として計上している」状況は極めてリスクが高いです。
従業員側にとっての問題:働いても給料ゼロ
今回のように、実際には給与が支払われていない状況では、働いても収入がなく、生活が成り立ちません。
また、帳簿上は給与があるため、住民税や所得税、国保の課税対象とされる可能性もあります。実収入ゼロなのに課税されるという矛盾が発生し、非常に不公平な状況になります。
適切な対応方法と相談先
まず行うべきは、事業主に対して支払いを正式に求めることです。可能であれば書面で明確に給与契約があること、支払われていない月数などを残しておきましょう。
それでも改善されない場合、次のような相談窓口があります。
青色申告会などで形だけの処理をしていても、税法に照らせば違法処理になり得ることをしっかり理解する必要があります。
実例:税務調査で否認され、追徴課税になったケース
ある個人事業主が3年間にわたり、従業員への給与を支払っていないのに経費計上していたところ、税務調査で指摘され、300万円近い追徴課税と延滞税が課されました。
さらに従業員側も、実際の受取がないにも関わらず所得があるとみなされ、住民税の修正申告を余儀なくされました。
まとめ:給与の未払いと帳簿上処理の食い違いは危険
・実際に支払っていない給与を経費にするのは税法違反
・未払いのまま処理すれば税務署にばれる可能性は高い
・従業員側にも課税・生活面での不利益が生じる
・改善されない場合は専門機関に早めの相談を
「給料を払ったことにしてある」という処理は、形式ではなく実態が伴って初めて合法です。しっかりと対策をとり、自分の働きに見合う対価を正当に受け取れる環境を整えましょう。
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