医療費控除を申告する際、保険金による補てん金額が控除対象額にどのように影響するかは非常に重要なポイントです。特に、入院給付金や診断給付金の受け取りがある場合、その扱いに誤解が生じやすいため、正しい計算ルールと具体例をもとに解説します。
医療費控除の基本的な計算式
医療費控除額は次の式で計算されます。
(実際に支払った医療費の合計額 − 保険金などで補てんされた金額 − 10万円 or 総所得の5%)
ただし、補てんされた金額は「その給付の目的となった医療費」にのみ適用され、他の医療費から差し引くことはできません(限定的相殺方式)。
入院給付金と診断給付金の扱いの違い
入院給付金は、入院期間や日数に応じて支払われ、その給付の目的は入院費用であるため、該当する医療費から差し引く必要があります。
一方、診断給付金(例:「がんと診断されたら一時金60万円」など)は、診断自体に対して支払われるものであり、特定の医療費の補てんとみなされないため、医療費控除の計算上、差し引く必要はありません。
実例で確認:3ヶ月入院、給付金90万円+診断給付金60万円
例として以下の状況を想定します。
- 年間支払医療費:50万円(高額療養費適用後)
- 入院給付金:10,000円/日 × 90日 = 90万円
- 診断給付金:60万円
- 入院費用(高額療養費適用後):25万円
- 総所得:300万円(基礎控除額10万円適用)
この場合、入院給付金は25万円分が該当入院費用の補てんとして控除対象になります。残りの65万円は入院費を超えているため、他の医療費から差し引くことはありません。
診断給付金60万円は医療費控除の計算に含める必要はありません。
控除額の具体的計算式
以下のように計算されます。
- 支払医療費合計:50万円
- 補てん額(入院分):25万円
- 差引医療費:25万円
- 控除対象額=25万円 − 10万円(総所得200万円超なので)=15万円
よって、医療費控除として申告できる金額は15万円です。
よくある誤解と注意点
保険金の受け取りが多くても、それが実際に支払った医療費に対応していない場合、差し引く必要はありません。
また、控除の対象とするには、医療費の領収書や保険金の給付明細書などの書類をきちんと保管し、確定申告時に提出できるよう準備しておくことが重要です。
まとめ:保険金の「目的」によって差し引くかどうかが決まる
医療費控除の計算では、「その保険金がどの医療費に充てられるものか」によって控除対象額が変わります。入院給付金のように明確に医療費に対応するものは差し引きますが、診断給付金や慰労金的な支払いは差し引く必要がありません。正しく理解し、安心して確定申告を進めましょう。
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