海外から商品を輸入する際、「1万円以下なら関税がかからない」という話を聞いたことがある方も多いかもしれません。これは一部正解ですが、すべてのケースに当てはまるわけではありません。特に商用目的での輸入となると話が変わってきます。本記事では、個人輸入・商用輸入における関税の取り扱いや実際の事例を交えて、誤解されがちなポイントをわかりやすく解説します。
個人輸入における1万円以下の免税の仕組み
個人が海外から商品を購入し、自分で使用する目的で輸入する「個人輸入」の場合、課税価格が1万円以下(海外小売価格×0.6)であれば、原則として関税および消費税は免除されます。これは「少額輸入品の簡易税率適用除外」のルールによるものです。
例えば、衣類を9,000円で購入したとすると、課税価格は9,000円×0.6=5,400円となり、1万円以下のため免税対象になります。ただし、この免税措置はあくまで「個人使用が目的」の場合に限られます。
商用目的での輸入は免税対象外になる可能性が高い
輸入した商品を転売目的で仕入れる「商用輸入」は、1万円以下であっても原則として関税・消費税が課税対象となります。税関では輸入者の申告内容や輸入頻度、荷物の内容などから「商用」と判断することがあります。
たとえば、1万円以下の商品を頻繁に輸入している、同一商品の数量が多い、またはパッケージングが業務用であるといった点が見られると、個人使用とはみなされず免税が適用されないこともあります。
実際に商用で1万円以下の品を複数回輸入した場合の例
仮に衣類(1点あたりの仕入れ価格8,000円)を週に1回、合計12回輸入した場合、合計金額は96,000円にのぼります。このように定期的な輸入が続くと、税関からは「個人使用の範囲を超えている」と判断され、課税対象となる可能性があります。
さらに、納税義務を怠ると追徴課税や罰則のリスクもあるため、「少額×頻度」で抜け道を狙うのは危険です。
注意すべき衣類の関税率と分類
衣類には素材や用途によって異なる関税率が適用されます。たとえば。
- 綿製のシャツ:関税率9.1%
- ポリエステル製のTシャツ:関税率10.9%
- ウール製ジャケット:関税率13%
加えて、皮革・ニット製品、靴などは高関税対象になりやすいため、品目ごとの関税コード(HSコード)を確認しておくことが重要です。
輸入ビジネスを始める際のポイントと対策
商用目的で海外製品を輸入する場合は、「輸入者コードの取得」「インボイス記載内容の明確化」「税関との事前相談」などの対応が不可欠です。
また、関税・消費税のコストを見越して価格設定や仕入れ戦略を立てることが、健全なビジネス運営には欠かせません。
まとめ:免税範囲の誤解に注意。商用輸入ならきちんと申告を
「1万円以下なら関税はかからない」は、個人使用に限定されたルールであり、商用目的の輸入では適用されないケースが多いです。輸入をビジネスとして行うなら、関税の仕組みを正しく理解し、税関との信頼関係を築きながら適切に申告することが重要です。
今後のビジネス展開をスムーズに進めるためにも、最寄りの税関または通関業者に事前相談することを強くおすすめします。
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