「今月の収入が大きく増えたのに、健康保険料や厚生年金保険料はなぜ変わらないのか?」と疑問に感じる方は少なくありません。実は、社会保険料の計算には“今月の収入”ではなく、一定期間の平均月収を用いるルールがあります。本記事では、健康保険・厚生年金の保険料がどのように決まるのか、昇給や残業代が増えたときに反映されるタイミングについて解説します。
社会保険料の計算は「標準報酬月額」で決まる
社会保険料(健康保険料・厚生年金保険料)は、実際の給与額ではなく、「標準報酬月額」という制度上の区分に基づいて決まります。標準報酬月額とは、給与や手当の総額を一定の幅で区切った“等級”のことです。
たとえば、月収が30万円〜32万円の人は、標準報酬月額30万円に区分され、その等級に応じた保険料が毎月徴収される仕組みです。よって、単月の給与が大きく増えても、即座に保険料が増えるわけではありません。
保険料が見直されるタイミングはいつ?
社会保険料が見直されるタイミングには主に以下の3つがあります。
- 定時決定(年1回):4月~6月の給与3か月分の平均で標準報酬月額が決定。9月分の給与(10月支払)から新保険料が適用。
- 随時改定(昇給など):昇給などで固定的賃金が大幅に増減し、その後3か月間の平均給与が2等級以上の変動となった場合、4か月目から保険料が見直されます。
- 資格取得時決定:就職や転職などで新たに社会保険に加入したときに初期の標準報酬月額が決まります。
そのため、1回だけ収入が多かった月があっても、保険料にすぐ反映されることはありません。
一時的な残業やボーナスは対象になる?
ボーナスや一時的な残業代・手当は、標準報酬月額の対象となる「固定的賃金」には含まれません。これらは「賞与」として別計算となり、賞与支払時に賞与額に応じた保険料がその都度控除されます。
たとえば、月給30万円の人が、ある月だけ残業代を含めて50万円の収入になっても、保険料は従来の標準報酬月額30万円ベースで徴収されるのが一般的です。
保険料の今後の見直しに備えるには?
収入増が続く場合は、以下の点に注意しておくとよいでしょう。
- 4~6月の収入は要注意:この時期の給与が高くなると、年1回の定時決定で保険料が増額される可能性が高くなります。
- 固定給の変動は随時改定対象:昇給や基本給の調整があると、保険料が数ヶ月後に変わる可能性があります。
- 副業や歩合給がある場合:会社によって扱いが異なるため、人事・総務部に確認するのが確実です。
また、給与明細で保険料の欄を定期的にチェックし、変更時期を意識することで家計管理にも役立ちます。
まとめ
健康保険料や厚生年金保険料は「今月の収入」ではなく、「標準報酬月額」に基づいて決まるため、たとえ今月の収入が50万円に増えても、保険料がすぐには変わらない仕組みになっています。定時決定や随時改定といったルールを理解し、自分の収入の変動が将来の保険料にどう影響するかを知っておくことで、無駄な不安を減らすことができます。
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