保険会社の病状照会同意書でカルテ全開示は可能か?同意範囲と個人情報保護の観点から解説

生命保険

医療機関と保険会社との間で交わされる「病状照会」や「診療情報提供書」に関して、患者の個人情報がどこまで開示されるのかという疑問は少なくありません。特にカルテ全体の開示については慎重な対応が求められます。この記事では、保険会社からの病状照会同意書に基づき、医療機関がカルテ全体を開示することが可能なのかについて、法的根拠や個人情報保護の観点から解説します。

病状照会同意書とは何か

病状照会同意書とは、保険会社が保険金支払いの判断を行う際、被保険者(患者)の医療情報を医療機関に照会するために取得する同意書です。患者が署名し、保険会社に医療情報を提供する許可を与えるものです。

ただし、同意書の範囲は個別に確認が必要であり、「病状」に関する情報に限られているケースがほとんどです。

カルテ全体の開示は許されるのか?

一般的な病状照会の同意書では、カルテ全体の開示は含まれていないと解釈されるのが通例です。医療機関は、患者からの包括的な明示的同意がなければ、病状に直接関係のない診療記録まで提供することはできません。

個人情報保護法および医療関連ガイドラインにより、医療情報の第三者提供には厳しい制限が課されています。

「要配慮個人情報」とは何か

要配慮個人情報とは、健康状態や病歴、診療内容など、取り扱いに特に注意を要する個人情報です。保険会社への提供は原則として、患者の明確な同意が必要であり、目的を超えた利用や提供は個人情報保護法に違反します。

つまり、病状照会に関する同意書に「カルテ全体の開示」と明記されていなければ、要配慮個人情報の一部であるカルテの全文を開示することはできません。

実際の開示範囲の例

保険会社が求める情報は、たとえば「診断名」「初診日」「治療経過」「処方内容」などであり、これらに該当する情報を医師が診療情報提供書等に記載して提出します。カルテの写しを求められた場合でも、「病状に関する部分のみの抜粋提供」で足りるケースが大半です。

実際、医療機関が保険会社に提出する書類は、主治医が必要と認めた範囲に限られています。

患者本人の意思が最優先

カルテ開示に関しては、本人の意思が最も尊重されます。本人が「一部のみ開示してほしい」「カルテ全体は開示したくない」と考える場合、その意向は医療機関が守るべき法的義務です。

仮に、保険会社の同意書に不明確な文言しか記載されていない場合は、開示範囲を本人と確認するか、追加の同意を得ることが求められます。

まとめ:同意書=無制限開示ではない

病状照会同意書は、保険会社が医療情報を取得する正当な手段ではありますが、それは「あくまで本人が同意した範囲内に限られる」ことを忘れてはなりません。

カルテ全体の開示が許されるのは、明示的な同意があった場合に限られます。患者の権利とプライバシー保護のためにも、医療機関や保険会社は慎重な対応を心がけるべきです。

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