近年、「オルカン(全世界株式インデックス)」と「債券」の組み合わせによるポートフォリオが注目を集めています。特に、オルカン70%+債券30%という配分は「事実上の元本保証ではないか」とも言われ、資産運用初心者からも人気です。しかし、それは本当に“預金レベル”の安心感があるものなのでしょうか。本記事では、資産配分のリスクとリターンのバランス、そして誤解されがちな「元本保証」の実態を詳しく解説します。
オルカンとは何か?インデックス投資の王道
オルカンとは「オール・カントリー」の略で、MSCIオール・カントリー・ワールド・インデックス(ACWI)などの全世界株式に連動する投資信託を指します。これ1本で日本・アメリカ・新興国を含む全世界の株式に分散投資が可能です。
例えば、「eMAXIS Slim 全世界株式(オール・カントリー)」などは低コストで長期運用に適した商品として人気を集めています。
債券とは?リスクを抑える安定資産
債券は、国や企業が発行する借金証書であり、一般的に価格の変動が小さく、利回りもあるため「守り」の資産とされています。特に日本国債や米国債は比較的リスクが低いとされています。
リーマンショックの際も株式が暴落する中、債券価格は安定し、ポートフォリオの下支えとして機能しました。これが「恐慌時に債券が買われる」と言われる理由です。
オルカン70:債券30=元本保証ではない理由
この比率の配分は確かにリスクとリターンのバランスが取れており、一般的な中長期運用において有効な戦略とされています。しかし、「元本保証」とはまったく異なる概念です。
株式市場が暴落すれば、オルカン部分の資産は大きく目減りします。債券がそれをある程度カバーするとはいえ、元本割れのリスクは常に存在します。元本保証は、あくまで国が保証する預金保険制度のある銀行預金などに限られます。
なぜ多くの人が預金を選ぶのか?心理的な背景
資産運用の観点ではインフレに対して不利な預金ですが、それでも預金を選ぶ人が多いのは「安全性」に対する強い信頼があるからです。たとえば定期預金は利回りが低くても確実に元本が守られ、資産の変動がない安心感があります。
一方で、投資信託には元本割れのリスクがあるという認識が根強く、リスク許容度が低い人にとっては一歩を踏み出すのが難しいのです。
実際の過去データ:10年保有ならどうなる?
例えば2008年のリーマンショック直後にオルカンへ投資した場合でも、2020年までの長期保有で年平均リターンは6〜8%に落ち着いています。一時的な下落はあるものの、10年以上の保有で資産は回復し、むしろ増加した例も多く存在します。
債券との組み合わせにより、暴落時のリスクをさらに緩和できるため、長期的に見れば非常に堅実な戦略といえるでしょう。
まとめ:安心感とリターンをどうバランスさせるか
オルカン70%+債券30%という組み合わせは、長期で見れば非常に合理的な資産配分ですが、「元本保証」とは根本的に異なります。投資には常にリスクが伴いますが、適切な知識と長期視点を持てば、それは「恐れるもの」ではなく「活用すべきもの」になります。
資産運用は、リスクの正体を理解するところから始まります。自身のライフスタイルやリスク許容度に合わせて、預金と投資をバランスよく活用しましょう。
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