運送業界で働く中で、「会社のトラックに保険がかかっていない」「従業員が自分で保険をかけさせられた」といった声を聞くことがあります。こうしたケースは果たして法律上許されるのか、業界の実態はどうなっているのかを解説します。
原則として業務用車両の保険は事業者(会社)が加入
トラックなどの業務使用車両は、運送事業者が自動車損害賠償責任保険(自賠責)および任意保険に加入するのが通常です。これは事業活動における責任を負う主体が会社であるためです。
特に運送業のように交通事故リスクが高い業種では、任意保険への加入も事実上必須とされており、多くの運送会社は自社で包括的な車両保険を契約しています。
従業員個人が業務車両に保険加入するケースは原則「異常」
従業員が自らの負担で保険に入るよう指示された場合、それが会社所有の業務車両に関するものであれば法的・労務的に非常に問題があります。
労働契約上、業務に必要な経費(燃料代、整備費、保険料など)は事業主が負担すべきもので、従業員に負わせることは原則違法と解釈される可能性が高いです。
よくある例外:「持ち込み車両(持込制度)」の場合
一部の軽貨物運送業などでは、ドライバー自身が車両を所有し、業務委託契約で配達する形式が採られています。この場合は保険加入も運転者本人の責任となるため、自己負担で保険料を支払うのは妥当です。
しかし、これは「雇用契約」ではなく「業務委託契約」であり、労働者ではなく個人事業主として扱われる点が大きな違いです。
トラックの保険に加入していない会社のリスク
保険未加入のトラックで事故を起こした場合、会社は高額な損害賠償責任を直接負うことになり、従業員も補償を受けられないという重大なリスクを抱えます。
また、事業用自動車には対人・対物の賠償責任保険加入が事実上の業界標準となっており、保険未加入は許認可や信頼性の面でも大きなマイナスです。
万一加入を強制された場合の対応と相談先
もしも会社から「トラックの保険は自分で入って」と求められた場合は、契約内容と就業形態を明確に確認し、労働基準監督署や労働組合、または弁護士に相談するのが安全です。
記録を残すためにも、やり取りは書面やメールで保存しておくと後の証明に役立ちます。
まとめ:業務用車両の保険料は原則「会社の責任」。例外は持込契約のみ
運送業において、会社が保有・管理するトラックの保険は、原則として会社が加入・負担するものです。従業員に加入を求めることは法的に問題があり、通常の雇用契約では認められません。
例外として、自身の車両を使う持込契約であれば保険加入も自己責任となりますが、それ以外で従業員に負担を求めるケースは慎重な対応が求められます。違和感を覚えた場合は、必ず専門機関に相談するようにしましょう。
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