年金の受給開始年齢は原則65歳ですが、早めに受け取る「繰り上げ請求」も可能です。とはいえ、繰り上げると年金額が減額されるため、何歳で請求すればどのくらい減るのかを知っておくことはとても重要です。今回は、64歳で繰り上げ請求する場合の具体的な減額率や計算方法について、分かりやすく解説します。
繰り上げ受給とは?減額の基本ルール
繰り上げ受給とは、老齢基礎年金を65歳より前に受け取り始める制度です。受給開始を1ヶ月早めるごとに0.4%(2022年4月以降は0.4%、それ以前は0.5%)の減額となり、生涯にわたってその金額が続きます。
2022年4月以降の請求では、以下のルールが適用されます。
- 1ヶ月の繰り上げ=0.4%減額
- 最大60ヶ月(5年)前まで繰り上げ可能=最大24.0%減額
実際のケース:64歳1月に誕生日、同年7月に請求した場合
たとえば、誕生日が1月中旬で満64歳を迎え、7月に繰り上げ請求した場合、65歳までの残り期間は「11ヶ月」です。
この11ヶ月分を繰り上げると、
0.4% × 11ヶ月 = 4.4%の減額となります。
例えば、65歳から月額10万円の年金を受け取れると仮定した場合。
10万円 × (1 − 0.044)= 95,600円
つまり、64歳7月に繰り上げると、月額は約95,600円になります。
繰り上げのメリットとデメリット
メリット:
- 早く受け取れるため、生活資金が必要な場合に助かる
- 受給期間が長くなれば、生涯受取総額が有利になることも
デメリット:
- 一度繰り上げると、あとから変更はできない
- 障害年金や加給年金、振替加算など一部の年金制度が使えなくなる
慎重に考えたうえで、生活状況や健康状態に応じて判断することが大切です。
損得の目安:何歳まで生きると繰り上げが損になる?
一般的に、81〜83歳前後が損益分岐点とされており、それ以前に亡くなる場合は繰り上げの方が得、以後なら65歳からの受給の方が得になります。
ただし、「今すぐお金が必要」「今後の健康が不安」という方は、目先の生活を安定させるために繰り上げを選ぶ判断も十分合理的です。
まとめ:繰り上げ請求は事前の計算が大切
繰り上げ請求は、人生全体の資金計画に大きな影響を与える選択です。今回のように、64歳7月に請求すれば、月額年金は約4.4%減額されるという結果になります。
自身の生活状況や将来設計を踏まえて、早めにシミュレーションを行い、納得したうえで決断することが、後悔のない老後の第一歩となります。
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