近年、スタートアップ企業や外資系企業を中心に年俸制を採用する企業が増えてきました。しかし、「年俸制は社会保険料や退職金にどう影響するのか?」「月給制と何が違うのか?」といった疑問を持つ方も少なくありません。この記事では、年俸制と月給制の違いを、社会保険や介護保険、退職金制度も含めて詳しく解説します。
年俸制とは?仕組みをわかりやすく解説
年俸制とは、1年間の報酬額をあらかじめ決定し、それを12分割または14〜16分割して月々支払う給与体系です。賞与(ボーナス)がない場合もあれば、業績連動で変動する「年俸に含まれる賞与分」があるケースもあります。
たとえば、年俸600万円を12等分すると毎月の支給額は50万円となります。この50万円には賞与が含まれる前提で設計されているため、夏冬にボーナスをもらえる月給制の人とは支給タイミングの点で異なります。
社会保険料・介護保険料の算定は?
年俸制でも月給制でも、社会保険料・介護保険料の算定は支給額ベースで行われます。つまり、12分割された場合はその月々の支給額に応じて保険料が算出されます。
ただし、年俸制の場合、賞与を別途受け取らないため、月給制と比べて保険料計算が安定する可能性があります。一方、「ボーナスに対して社会保険料がかからない」と勘違いする人もいますが、年俸に賞与が含まれていれば、既に保険料対象になっている点に注意が必要です。
退職金・企業年金に差が出る可能性も
月給制の企業では、勤続年数や基本給を基にした退職金制度が整備されているケースが多く、加えて確定給付企業年金(DB)や確定拠出年金(DC)に加入していることがあります。
一方、年俸制の会社では「成果主義」や「自律型人材」を重視する風潮があり、退職金制度がなかったり、あっても簡素な企業型DCのみというケースが目立ちます。転職先がこの点でどのような制度設計をしているかは必ず確認しましょう。
年俸制の主なメリット・デメリット
- メリット
- 成果に見合った報酬を得やすい
- 賞与が固定されるため資金計画が立てやすい
- 経営状況に左右されにくい給与設計
- デメリット
- 退職金や企業年金制度がない可能性
- 賞与がないため生活費調整が難しい
- 基本給が低めに設定されることもある
特に住宅ローン審査や育休手当の算定では「基本給+賞与」と比較されることがあるため、ボーナス込みの年俸制では不利に働く場合があります。
実際のシミュレーションで比較
月給制:月30万円+賞与年2回(60万円×2)=年収420万円 → 賞与に対して社会保険料がかかるのは「年2回のみ」
年俸制:年収420万円(賞与含む)÷12=月35万円支給 → 毎月35万円に対して社会保険料がかかる
結果として、年俸制の方が社会保険料の負担が月単位で安定する一方で、トータルの控除額が多くなるケースもあります。
まとめ:転職時は制度比較と目的確認を
年俸制は月給制と比べて「安定的に見えて実は変動が大きい制度」です。特に退職金・企業年金・賞与の有無や社会保険料の扱いは、将来の資産形成に直結します。
転職先がどのような制度を用意しているのか、書面で確認し、納得して選ぶことが重要です。人生設計に合った働き方と制度を選びましょう。
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