病気やけがで働けなくなったとき、生活を支える手段として心強いのが「健康保険の傷病手当金」です。ただし、実際に支給される金額を月ごとに見てみると、「今月は多かった」「今月は少ない」と感じることがあります。中には、日額ベースで計算しても毎月の金額に差があると不思議に思う人もいるでしょう。この記事では、その理由を制度的な観点から詳しく解説していきます。
傷病手当金の基本的な計算方法
傷病手当金の支給額は、原則として「直近12カ月の標準報酬月額の平均 ÷ 30日 × 2/3」で算出される「1日あたりの支給額(日額)」をベースに、実際に働けなかった日数分が支給されます。
つまり、1カ月あたりの金額は「日額 × 支給対象日数」であり、1カ月の日数が28日なのか31日なのか、祝日が多いかどうかなどにより、総支給額が変動するのです。
月によって金額が変わるのは「支給日数」が違うから
傷病手当金は「1日単位」で支給されるため、月によって対象日数が異なれば、支給額も当然変動します。たとえば、2月は28日間しかないため少なくなり、31日ある月はその分多くなります。
例:
・3月(31日すべて傷病手当対象):日額7,000円 × 31日=217,000円
・2月(28日すべて対象):日額7,000円 × 28日=196,000円
このように、日額が同じでも月の日数により支給額が変動します。
日額が変わったように見える原因とは?
実際には計算式通りに支給されていても、受給者が「日額が違う?」と感じることもあります。その原因として次のようなものが考えられます。
- 支給対象日数が中途半端(例:途中から出勤)
- 祝日や休日の扱いで日数が変わっている
- 支給期間の切れ目(月初と月末)で区切られている
- 標準報酬月額が更新された(年度更新や昇給・降給)
たとえば、月の途中で出勤日がある場合、その日は「労務可能日」として除外されるため、支給日数が減り、結果的に月額も減ります。
標準報酬月額の変更で日額自体が変わることも
傷病手当金の計算に使う標準報酬月額は、原則として「支給開始日」の直近12カ月で計算されますが、傷病手当金が長期にわたる場合や、支給開始日が年度をまたぐと、定時決定(年1回の報酬見直し)により金額が変わることがあります。
たとえば、7月に支給額が下がった場合、それは6月の定時決定で標準報酬月額が下がった影響かもしれません。このように、日額そのものが変わっている可能性もあるため、健保組合に明細や計算根拠を問い合わせて確認することが重要です。
実際のケースと対処方法
【例1】Aさん:1月はまるまる休職して満額支給だったが、2月は5日だけ出勤→支給日数が減ったため、支給額が大幅に減少。
【例2】Bさん:前年の賞与で標準報酬月額が一時的に上がっていたが、今年の定時決定で下がった→7月から日額が減少。
このように、制度上の正当な理由で支給額が変動しているケースがほとんどです。不安な場合は、支給決定通知書や支給内訳書を確認のうえ、健康保険組合や協会けんぽに問い合わせると安心です。
まとめ:傷病手当金の変動は制度に基づいた自然な現象
傷病手当金は「日額 × 支給日数」で計算されるため、月ごとに金額が変動するのは通常のことです。また、標準報酬月額の変更や出勤・休日の影響で、日額や支給日数が異なることもあります。
「おかしいかも?」と思ったら、まずは支給日数と計算根拠を確認し、不明点は保険者に問い合わせてみましょう。制度を正しく理解することで、不安なく安心して療養に専念することができます。
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