近年、後期高齢者にかかる医療費が「思っていたよりも高い」と驚くケースが増えています。特に、高額療養費制度の上限が高くなることで、負担感が強くなっていることも。その背景や仕組み、そして“お金が戻る”可能性について、具体例を交えてわかりやすく解説します。
後期高齢者医療制度と自己負担割合の基本
75歳以上の高齢者は「後期高齢者医療制度」に加入し、医療費の窓口負担は原則1割です。ただし、一定以上の所得がある方は2割、3割負担となるケースもあります。
この「一定以上の所得」は、2年前の所得に基づいて判定されます。そのため、一時的な収入増(不動産売却・株式売却など)でも、後の2年間の医療負担が増加する可能性があるのです。
高額療養費制度と25万円上限の仕組み
高額療養費制度では、月ごとの医療費自己負担に上限額が設けられています。上限額は世帯ごとの所得区分で変わり、最高額は約25万円前後です。これは、3割負担の方で年収が約370万円以上の高齢者が該当するラインです。
仮に、個室料(保険適用外)と合わせて50万円を超えたとしても、医療費部分が25万円を上限とする場合もあるため、「手術+入院=50万円」という感覚はズレが生じることもあります。
所得判定の元となる「基準年」とのタイムラグ
多くの方が見落としがちなのが、判定に使われる所得が「2年前の住民税課税情報」である点です。たとえば2024年8月の医療費に適用される所得は「2022年中の所得」に基づくため、2022年に一時的な高収入があった場合でも、2024年度の医療費負担が大きくなるという構造になっています。
つまり、「普段は年金のみで低所得」という人でも、一時的な売却益等があると、高所得と判定され、最大限の自己負担区分に入ってしまうリスクがあるということです。
救済措置として「所得区分の変更申請」はできる?
高額療養費制度では、「著しい所得の変動」や「一時的な収入」によって負担が増した場合、自治体に所得区分の見直しを申請できる可能性があります(自治体によって対応は異なります)。
特に、2022年だけ所得が突出して高かったなどの理由がある場合、「所得申立書」や「収入証明書」などを提出して、減額判定を求めることができます。自治体の後期高齢者医療課に相談してみると良いでしょう。
医療費控除や確定申告による還付の可能性
50万円を超える医療費が発生した場合、年間10万円を超える部分について「医療費控除」の対象になります。これにより、確定申告を通じて所得税の一部が還付される場合もあります。
ただし、所得控除による効果は、もともとの所得が低い場合には限定的です。あくまでも「一部が戻る可能性がある」程度と考えておきましょう。
個室料や差額ベッド代は保険対象外
請求額が大きく見える要因のひとつに、「個室の利用」があります。個室や特別室の利用は保険適用外であり、病院によっては1日2万〜3万円以上かかることも。
そのため、手術費用は保険適用で抑えられていても、差額ベッド代の累積が高額になり、請求全体が50万円を超えるケースは少なくありません。
まとめ:高額になった医療費は確認と相談で軽減の余地も
後期高齢者の医療費が想定以上に高額になってしまう原因は、「所得判定のタイムラグ」や「保険外負担」の存在によるものが大半です。しかし、所得の申立てによる見直しや、医療費控除による還付の可能性もあるため、諦めずに自治体窓口や税務署に相談してみることが重要です。
制度は複雑ですが、正しく理解すれば、本来払うべき以上の費用を抑える道も開けるかもしれません。
コメント