「本人ではない人が通帳からお金を下ろすには委任状が必要」と聞くと、「その紙って偽造できてしまうんじゃないの?」と疑問に思う方もいるでしょう。確かに、委任状は紙の書類であり、見た目だけなら作成は難しくありません。しかし、実際の銀行窓口では、委任状そのものだけで出金できるわけではないということをご存知でしょうか?この記事では、銀行の委任状の仕組み、安全性、偽造のリスク、そして出金時のチェック体制について詳しく解説します。
委任状でお金を下ろすには何が必要か?
銀行で代理人が本人に代わって出金するには、以下の書類や証明が原則として必要です。
- 本人が自筆で記入・押印した委任状
- 本人の通帳またはキャッシュカード
- 本人の身分証(コピー)
- 代理人の身分証(原本)
つまり、委任状単体ではなく、「本人からの意思確認がされたうえでの複数書類のセット」が求められます。
委任状は偽造できるのか?
紙の委任状は、書式が自由な場合も多く、誰でも記入できてしまうため、物理的には「偽造が可能」と言えます。しかし実際には、銀行窓口では筆跡や印鑑の照合、取引履歴との整合性チェックが行われるため、不自然な点があると確認が入ります。
特に、本人が「その委任は出していない」と銀行に申し出た場合、その場で取引が止まり、出金は拒否される可能性が高くなります。
本人が拒否しているのに代理人が出金できるのか?
原則として、本人が意思表示を拒否しているにもかかわらず代理人が勝手に出金することは不可能です。銀行では本人確認と意思確認を重要視しており、特に高額な出金や高齢者の口座に関しては、窓口での詳細なヒアリングが行われます。
また、本人の意思に反する出金が行われた場合、それが委任状の偽造であれば、刑法上の「私文書偽造罪」や「窃盗罪」などに該当する可能性があり、被害届を出すことで警察の捜査対象にもなります。
銀行が行っている不正防止の具体的対策
各金融機関では、委任状を悪用した不正取引を防ぐために、次のような取り組みを実施しています。
- 筆跡・印影の照合:印鑑登録済の印鑑と委任状の押印を比較
- 電話による本人確認:疑義があれば本人に直接確認連絡
- 預金保険機構の指導に基づく内部ガイドライン
- 過去の取引パターンとの照合:異常行動を自動で検知するシステムも導入
たとえば、普段はATMしか使わない人の口座から急に窓口で高額出金がある場合などは、職員が不審に思い確認を取るケースが多くあります。
偽造が疑われるときの対処法
「自分の委任なしに勝手に誰かが出金しようとしているのでは?」と不安になったら、次の行動を取りましょう。
- 速やかに銀行に連絡して口座にロックをかけてもらう
- 委任状の受理状況を照会してもらう
- 通帳やキャッシュカードを停止・再発行する
- 警察や消費者センターへの相談も検討
とくに高齢者の親族が狙われやすいため、家族で情報共有し、必要に応じて成年後見制度の活用なども視野に入れることが推奨されます。
まとめ:委任状は万能ではなく、銀行は厳格な確認を行っている
委任状は確かに「紙」であり、形式的には誰でも書けてしまうかもしれません。しかし、銀行ではそれだけで出金できるような仕組みにはなっていません。本人の意思確認や複数の身分証明、行内チェック体制がしっかり構築されており、勝手な出金は原則として不可能です。
万が一のリスクを防ぐためにも、自分の口座に不審な動きがないかを定期的に確認し、不正が疑われる場合は早めの相談・通報が重要です。
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