60歳以降に特別支給の老齢厚生年金を受給しながら働く方が増えている中、「仕事を辞めたあと失業保険(雇用保険の基本手当)はもらえるのか?」という疑問を持つ方も少なくありません。さらに、年金を受け取っていることで失業保険が減額されるという話も耳にします。今回は、その仕組みを実例を交えて丁寧に解説します。
特別支給の老齢厚生年金とは?
特別支給の老齢厚生年金とは、原則65歳から支給される老齢厚生年金を、一定の要件を満たすことで60歳から前倒しで受給できる制度です。1953年4月2日〜1961年4月1日生まれの男性、あるいは1958年4月2日〜1966年4月1日生まれの女性が対象になります。
この年金は「働きながらもらうことができる」ため、パートタイムなどとの両立も可能です。ただし収入が多いと支給が停止される仕組みもあるため注意が必要です。
失業保険(基本手当)は年金と併給できる?
結論から言うと、特別支給の老齢厚生年金を受けている場合でも、基本手当(失業保険)を受給することは可能です。ただし、受給中の年金額によっては、失業保険が全額または一部減額される可能性があります。
雇用保険法では、老齢年金を受給している場合、「賃金とみなされる年金額」があるとして、失業手当と調整が行われます。
併給調整のルールと具体的な減額計算
失業保険は、基本的に1日あたりの給付額(基本手当日額)と、年金の1日換算額の合計が「上限」を超えると減額されます。
たとえば、月額30,000円の年金を受給している場合、これを30日で割ると1,000円/日。基本手当日額が5,000円の場合、一定の限度額を超えなければ減額はされません。
一方で、年金月額が10万円を超える場合、失業手当が全額支給停止になることもあります。自分の年金額と基本手当日額を照らし合わせて確認することが大切です。
支給停止・減額の判断基準と手続き
ハローワークでは、年金受給者が失業手当を申請する際、「年金の受給証明書」や「年金振込通知書」などの提出を求められます。その情報をもとに、日額に換算して調整額が計算されます。
併給調整の結果、失業手当が0円となる場合でも、受給資格そのものは残るため、求職活動の実績や条件によって再度支給が再開される可能性もあります。
実例で理解:60代前半で年金月額3万円のケース
たとえば、パート勤務をしていた60歳の方が月額3万円の特別支給の老齢厚生年金を受け取っていたとします。その後退職して、失業手当を申請した場合、3万円 ÷ 30日 = 1,000円/日。仮にハローワークが算定する基本手当日額が4,000円だったとすると、上限額を下回るため減額されずに受給できる可能性が高いです。
ただし、実際の判断はハローワークの計算基準に基づくため、申請時に正確な情報を提出することが重要です。
まとめ:老齢厚生年金を受けながらでも失業保険は原則受け取れる
特別支給の老齢厚生年金を受けていても、失業保険を受給することは可能です。ただし、年金額が高額な場合には調整により減額されることがあるため、自身の年金額と照らし合わせて確認しておく必要があります。
手続きには年金証明書類の提出が求められるため、準備を整えてハローワークへ相談することをおすすめします。適切な情報に基づいて行動すれば、損をせずに制度の恩恵をしっかり受け取ることができます。
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