信用金庫や地方銀行などで働く渉外係(営業職)は、日々顧客との関係を築きながら預金や融資の拡大を目指しています。中には「異動してきた際に、前任者の顧客情報を元に評価される」といった話もありますが、果たしてそれは本当なのでしょうか?本記事では、信用金庫の評価制度や「引き継ぎ顧客」の範囲、そして評価対象に関する実態について詳しく解説します。
渉外係は担当顧客の資産状況が評価指標になる
多くの信用金庫では、渉外係の評価指標として「預金残高」「融資残高」「新規開拓件数」「顧客訪問件数」などが用いられます。これらは、あくまで個人のパフォーマンスを数値で表すものであり、毎月・半期・年度単位で集計されます。
異動直後は、ある程度前任者の残した顧客データに基づく評価が存在するのは事実です。ただし、それは一時的なものであり、最終的には自分自身の営業実績が評価の中心となります。
「引き継ぎ顧客」の定義と範囲
渉外係が異動すると、原則としてそのエリア内の法人・個人の「既存顧客リスト」が後任者に引き継がれます。通常は、担当エリア内の法人とその関連する主要個人(代表者や経理担当など)が該当します。
例えば、A株式会社の社長が個人口座を開設していた場合、A社と社長個人の口座がセットで担当顧客となることはよくあります。しかし、社長の家族全員の口座までは通常「引き継ぎ対象」とはされません。
法人に関連した個人顧客は評価対象か?
法人の役員・社員が信用金庫に個人口座を持っているケースは多くありますが、それが法人と無関係であれば渉外係の評価対象には含まれないことが一般的です。逆に、代表者個人名義の預金をもとに法人への融資審査を行うなど、密接な関係がある場合は例外的に管理対象となることもあります。
評価上は「その渉外係が関与しているか」「営業行動によって維持・増加したか」が重視されるため、たとえ親族の口座であっても、関係性が希薄ならば評価対象外とされます。
実例:異動直後と半年後の評価の違い
ある信用金庫では、A渉外係が異動してきた際、5億円の預金残高を持つ担当先を引き継ぎました。初月の評価にはこの金額が反映されましたが、その後の評価には「訪問回数」や「増減額」「追加契約の有無」などの活動内容が加味され、3か月目以降は前任者の実績から独立した評価となったとのことです。
このように、前任者の資産実績が影響するのはごく短期間であり、中長期では自身の行動と成果が重視される傾向にあります。
評価と顧客関係の透明性を保つ工夫
顧客と渉外係の関係性は非常に重要ですが、一方で「担当が変わったから口座を解約する」などのリスクも存在します。そのため、信用金庫では組織的な顧客管理とチーム営業体制を構築し、特定の個人への依存を避ける取り組みも進められています。
また、渉外係個人の評価制度においても「既存維持」より「新規開拓」や「信頼構築による資産増加」への比重が高まってきています。
まとめ:渉外係の評価はあくまで行動と成果が中心
信用金庫の渉外係において、異動時に前任者から顧客資産を引き継ぐことはありますが、それが長期的に評価に影響することは少なく、主に自らの行動や成果が重要視されます。法人と関連する個人口座についても、関係性の深さや担当者の営業関与の度合いにより評価対象となるかが分かれます。
そのため、評価制度は数値のみでなく、質的な顧客関係の構築も大切な要素であると言えるでしょう。
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