2人以上世帯の平均・中央値の貯蓄額はどこまで含まれる?|ローン残高は考慮されている?

家計、貯金

統計で公表される「2人以上世帯の貯蓄額平均・中央値」は、家計の健全性を知る一つの目安になります。しかし、それらの数字には何が含まれ、何が除かれているのかを理解していないと、正確な家計比較ができません。この記事では、平均1,000万円超え・中央値約800〜900万円とされる家計の貯蓄額が、実際にどのようなデータを元にしているのかを解説します。

貯蓄額の定義:ローン残高は含まれない

まず明確にしておきたいのは、総務省の「家計調査」で公表される貯蓄額は、純資産(貯蓄−負債)ではなく、あくまで貯蓄残高のみを指しています。つまり、住宅ローンや自動車ローンなどの借入残高は差し引かれておらず、純粋に貯蓄口座などに残っている金額の合計が集計されています。

たとえば、預貯金500万円+保険型貯蓄300万円+投資信託200万円=1,000万円の家庭が、住宅ローンを1,500万円抱えていたとしても、この世帯の「貯蓄額」は1,000万円として計上されます。

どんな資産が「貯蓄」にカウントされている?

統計での「貯蓄」には以下のようなものが含まれます。

  • 普通預金・定期預金
  • 生命保険(解約返戻金)
  • 個人年金保険
  • 投資信託、株式、債券などの有価証券
  • 財形貯蓄
  • タンス預金(推定含む)

一方で、住宅・車・貴金属などの「実物資産」や「不動産資産」は含まれません。そのため、持ち家に大きな価値があっても、統計上の貯蓄額は増えません。

平均値と中央値の違いに要注意

2023年の総務省調査によれば、2人以上世帯の「平均貯蓄額」はおよそ1,400万円超ですが、「中央値」は800万〜900万円前後です。平均値は一部の超富裕層が数字を押し上げる傾向があるため、実感に近いのは中央値です。

たとえば、ある世帯の貯蓄が5,000万円だったとしても、それが少数派である場合、平均を大きく押し上げることがあります。一方で、中央値は金額順に並べた真ん中の値なので、より実態を反映します。

ローンなど「負債」は別途集計されている

家計調査では、「貯蓄」とは別に「負債」の金額も公開されています。たとえば。

  • 住宅ローン
  • 自動車ローン
  • 教育ローン
  • カードローン

このように、家計の全体像を知るには「貯蓄−負債=純資産」を見ることが重要ですが、公式統計ではあくまで個別項目として開示されています。

仮に貯蓄が1,000万円あっても、住宅ローンが2,000万円あれば、実質的な純資産はマイナスというケースも少なくありません。

実例:ローン残高が多い家庭の統計上の見え方

30代共働き夫婦のAさん家庭。

  • 預貯金:300万円
  • 株式・投信:200万円
  • 学資保険:100万円
  • 合計貯蓄:600万円
  • 住宅ローン残高:2,200万円

この場合、家計調査の統計に照らすと、貯蓄600万円としてカウントされます。ローン残高は別カテゴリ扱いなので、「借金のある家庭が貯蓄1,000万円超」とされる背景がここにあります。

まとめ:貯蓄統計の読み方には注意を

・統計でいう「貯蓄額」は、ローン残債を差し引いていない
・純資産額ではなく、あくまで貯蓄の「残高」ベース
・平均値よりも「中央値」に注目する方が現実的
・住宅などの実物資産は貯蓄に含まれない
・ローンとのバランスを見て、家計の健全性を判断するのが重要

数字の見え方にはトリックがありますが、正しく読み解くことで自分の家計の立ち位置を冷静に把握できるようになります。

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