不動産を複数人で所有している場合、「固定資産税は誰が払うのか」「通知は誰に届くのか」「支払わなければどうなるのか」など、トラブルの種になる疑問は多いものです。本記事では、共有名義の不動産における固定資産税の仕組みとリスクをわかりやすく解説します。
固定資産税は共有者全員に納税義務がある
固定資産税は、その不動産の所有者全員に連帯して課される税金です。つまり、持分の多寡に関わらず、誰か1人が全額を支払っても、他の共有者が知らん顔をしても、法的には全員が納税義務を負っているのです。
たとえば、Aさん40%、Bさん30%、Cさん30%という持分割合であっても、税金を誰がどれだけ負担するかはあくまで当事者間の話であり、行政は全額の納付を誰に対してでも請求できる仕組みです。
なぜ代表者に納税通知書が届くのか?
実務上、地方自治体(市区町村)は便宜的に共有者の中から1人の代表者を指定して納税通知書を送付しています。この代表者は税の支払い責任者という意味ではなく、あくまで通知窓口に過ぎません。
代表者の選定基準は自治体によって異なりますが、登記簿上の持分割合や登記順、居住地の近さなどが参考にされます。代表者の同意は必要なく、行政側が一方的に選定するケースが大半です。
支払わなかった場合、どうなるのか?
もし全員が支払いを怠った場合、最終的には行政が代表者に督促状や差し押さえ通知を送ることになります。ただし、それは代表者のみが責任を負うという意味ではなく、自治体が効率的な徴収手段として代表者にアプローチしているに過ぎません。
本来の納税義務は共有者全員にあるため、代表者が支払った分を他の共有者に請求する権利(求償権)を持ちます。逆に、誰も払わなければ延滞金や財産差し押さえが生じることもあり得ます。
「知らないふり」は通用しない
代表者以外の共有者が「通知が来ていないから知らない」と言っても、それは通用しません。法的には全員に納税義務があり、通知が届いていない=免責にはなりません。
特に相続などで不動産を共有することになった場合、相続人の一部が住んでいなかったり、連絡が取れない場合でも、税金の責任からは逃れられません。家族間の感情や人間関係が絡むと、なおさらトラブルに発展しやすくなります。
トラブルを回避するための実務対策
- 支払い分担を明確に取り決める:口約束ではなく、書面で合意書を残すのがベストです。
- 代表者に任せきりにしない:他の共有者も税の納付状況を把握し、協力する姿勢を持つことが大切です。
- 代表者を変更したい場合は自治体に相談:正当な理由があれば変更可能な場合もあります。
- 不動産の売却や持分整理も視野に:共有名義は長期的に見るとデメリットも多いため、将来的な整理を検討しましょう。
実例:兄弟で共有した実家のケース
ある50代の男性が、兄弟3人で相続した実家の固定資産税の納税通知書を一手に引き受けていたところ、10年間にわたって全額を支払っていたという事例があります。
その後、納税負担に不満を持った男性が他の兄弟に支払いを求めましたが、兄弟たちは「知らなかった」「住んでいないから払いたくない」と主張。最終的には家庭裁判所で求償請求を行うことになり、長期のトラブルと信頼関係の破綻に発展しました。
まとめ:共有名義の税金は全員の責任、連携がカギ
固定資産税の納税通知書が代表者に届いたとしても、支払い責任は共有者全員にあります。代表者が罰せられるということはありませんが、誰もが支払わなければ差し押さえや延滞金などのリスクがあります。
トラブルを防ぐためには、税金の支払いを当事者全員で話し合い、明確な分担を決めることが不可欠です。感情的な対立を避け、法的にも実務的にも納得のいく解決策を取るよう心がけましょう。
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