定年退職を迎えると、それまで加入していた会社の健康保険をどうするか、悩む方も多いのではないでしょうか。今回は、退職後に新しい仕事に就かず、任意継続被保険者制度を利用する場合にかかる費用や注意点について詳しく解説します。
任意継続とは?退職後も同じ保険を続けられる制度
健康保険の任意継続被保険者制度とは、会社を退職しても、最大2年間は今までの健康保険を継続できる制度です。条件は次の通りです。
- 退職時に継続して2ヶ月以上健康保険に加入していた
- 退職日の翌日から20日以内に申請
この制度を使えば、国民健康保険への切り替えをせずに、今まで通りの保険証を使い続けることができます。
任意継続で支払う保険料の仕組み
現役時代は保険料の半分を会社が負担していましたが、任意継続では全額自己負担になります。つまり、保険料は実質2倍になるということです。
任意継続で支払うのはあくまで「健康保険料」のみで、「厚生年金保険料」は含まれません。退職と同時に厚生年金の加入資格を喪失するため、以後は年金の納付義務は発生しません(60歳以上の場合)。
保険料以外にかかる費用は?
任意継続を選んだ場合、支払う費用は次の通りです。
- 健康保険料(全額自己負担)
- 介護保険料(40歳~64歳の方は支払い対象)
介護保険料は、40歳以上65歳未満の人が対象で、健康保険料に上乗せされます。65歳を超えると、市町村が運営する介護保険制度に移行します。
任意継続と国民健康保険の違いを比較
項目 | 任意継続 | 国民健康保険 |
---|---|---|
保険料の計算 | 在職時の報酬ベース | 前年所得や世帯人数に基づく |
保険者 | 全国健康保険協会や健康保険組合 | 市区町村 |
介護保険料 | 40歳以上に上乗せ | 同様に上乗せ |
扶養の考え方 | 扶養制度あり | 一人ずつ個別加入 |
収入が下がる人にとっては、国民健康保険の方が安くなる場合もあります。保険料は自治体により異なるため、比較検討が大切です。
手続きの流れと注意点
任意継続の手続きには期限があります。退職日の翌日から20日以内に、保険証や必要書類を添えて申請する必要があります。
また、保険料の支払いが1日でも遅れると、資格を失うことになるため、納付期限の管理には注意が必要です。
実際のモデルケースで費用をイメージ
例えば、現役時代の月収が30万円の方で、協会けんぽ加入の場合、健康保険料は約28,000円(東京・令和6年度目安)となります。退職後はこれを全額負担し、さらに40歳以上なら介護保険料約5,000円が加算されます。
つまり、月々の支払額はおおよそ33,000円程度となる計算です。収入がない状態でこの額を2年間支払えるか、見通しを立てて判断しましょう。
まとめ:退職後の保険選択はライフスタイルと収入に応じて
・任意継続では健康保険料を全額自己負担(厚生年金は対象外)
・介護保険料が加わる可能性あり
・保険料の比較と将来設計を踏まえて国保との比較を
・手続きは退職後20日以内、期限厳守
退職後も安心した生活を送るためには、健康保険の選択と支払い計画をしっかり立てておくことが大切です。迷ったときは各保険窓口や社会保険労務士に相談することもおすすめです。
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