犯罪経済や非合法な取引の実態は表に出ることが少ない一方で、その決済手段の変化には大きな社会的・技術的背景があります。とりわけ「闇取引では今も現金が主流なのか?」という疑問は、匿名性や追跡性の観点から、金融リテラシーや法制度の理解にも直結する重要なテーマです。この記事では、現代における闇取引の支払い手段の動向について、過去と現在を比較しながら解説します。
かつての闇取引:現金が唯一の選択肢だった時代
過去においては、闇市場における取引はほぼ100%が現金で行われていました。現金は発行元が明確であるにも関わらず、誰が誰に渡したかを記録しないため、匿名性が極めて高いという特徴があります。
特に、薬物・銃器・偽造品などの違法取引では、紙幣による受け渡しが当然とされ、現場では「ダークマネー」の象徴ともいえる存在でした。
近年の傾向:デジタル決済も徐々に浸透
しかし近年は、犯罪組織や詐欺グループの間でも、銀行口座やネット決済の利用が増加しています。特に下記のようなケースでは、現金以外の手段が用いられることがあります。
- 特殊詐欺の受け子→出し子の送金
- 匿名化したネットバンキングの振込
- 複数の名義口座(いわゆる“闇口座”)を使った資金洗浄
ただし、これらはすべて違法であり、マネーロンダリング規制(AML)や犯罪収益移転防止法による厳格な監視対象となっています。
仮想通貨の登場と匿名性の復活
現金の匿名性に匹敵する手段として注目されているのが、仮想通貨(暗号資産)です。特に以下のような仮想通貨は、ダークウェブなどでも利用されていることで知られています。
- Monero(モネロ):送金履歴の秘匿性が非常に高い
- Zcash:ゼロ知識証明による匿名性を実現
- Bitcoin:普及率は高いが、トラッキングも可能
このように、現代の闇取引では「デジタル化された匿名決済手段」への移行が一部で進んでいるのです。
警察・捜査機関はどこまで把握できているか
日本を含む多くの国では、金融機関と連携してマネーロンダリング対策が進められています。たとえば。
- 振込先口座の名寄せ・凍結
- 仮想通貨のブロックチェーン解析
- ダークウェブの監視と摘発
特に国際的にはFATF(金融活動作業部会)などが、加盟国に対してAML/CFT(テロ資金対策)を強化するよう勧告しています。つまり、「現金だから安全」「仮想通貨ならバレない」という認識はすでに通用しない時代です。
現金かデジタルか:使い分けの実情
現金は依然として「最も安全な匿名手段」とされており、大規模な物理的受け渡しが伴う取引(薬物・人身売買など)では今も使用されています。
一方、サイバー犯罪や詐欺のような“非対面型”の取引では、むしろ口座送金や暗号資産が主流になりつつあります。
実例として、詐欺グループの摘発時に数十のネットバンク口座と仮想通貨ウォレットが押収された事件もあり、手口は高度化の一途をたどっています。
まとめ:現金は今も使われるが、闇取引は確実にデジタル化へ進んでいる
闇取引において現金は依然として匿名性の高い手段として残っていますが、ネット口座・仮想通貨などデジタル決済の利用は年々増加しています。
犯罪捜査の網が広がる中、取引側も技術を巧妙に使い分けており、もはや「現金=闇取引の常識」とは言えない時代です。現代の資金移動手段について理解を深めることは、金融リテラシー向上にもつながる重要な視点です。
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