高齢の親が「万が一のときに預金が引き出せなくなる」と心配し、現金を自宅に置きたがるケースは少なくありません。しかし、自宅保管にはリスクがあるため、銀行に預けたまま安心して資産を管理する方法と、実際に亡くなった後の手続きについて事前に知っておくことが大切です。
預金は死亡後にどうなるのか?まずは口座凍結を理解しよう
銀行口座の名義人が亡くなると、その情報が銀行に伝わった時点で口座は原則「凍結」され、入出金が一時的にできなくなります。これは、相続人間のトラブルや不正引き出しを防ぐために必要な措置です。
口座が凍結されると、公共料金の自動引き落としやクレジットカードの支払いも停止されます。そのため、早めの対応が重要です。
遺族が預金を引き出すために必要な書類とは?
預金の引き出しには、銀行ごとに若干の違いがありますが、一般的には以下の書類が必要です。
- 亡くなった方の戸籍謄本(出生から死亡まで)
- 相続人全員の戸籍謄本
- 相続人全員の印鑑証明書
- 遺産分割協議書(相続人全員の実印が必要)
- 銀行所定の払戻請求書
これらを整えたうえで銀行に提出すると、相続人の指定した口座へ預金を振り込むという流れになります。
遺言書があれば手続きが簡略化できることも
遺言書がある場合、公正証書遺言であれば、銀行は遺言内容に基づき手続きを進めることができます。家庭裁判所の「検認」が不要となり、スムーズに引き出しが進むことが多いです。
一方、自筆証書遺言の場合は、家庭裁判所による「検認」が必要であり、数週間以上かかる可能性があるため、相続手続きに時間がかかることもあります。
葬儀費用のための預金引き出しは可能?
近年では、葬儀費用などの「緊急性のある支出」に対して、一部の銀行では限度額付きで預金の払い戻しに応じるケースも増えています(例:150万円まで)。
ただし、これも相続人全員の同意や、葬儀費用の領収書の提示が求められることがあるため、事前に銀行窓口で確認が必要です。
現金引き出しに頼るリスクと代替策
親が預金を全額おろして自宅に保管するというのは、盗難・火災・紛失といったリスクが高く、おすすめできません。また、相続税の観点でも問題が出る可能性があります。
代替策として、次のような方法もあります。
- 生活資金の範囲で一部を引き出し、必要な支出に備える
- 定期的に家族と資産状況を共有し、信託や任意後見制度を検討する
- 生前贈与や信託口座の活用
金融機関と相談して、個々の事情に応じた柔軟な対応を検討することが大切です。
まとめ:口座凍結は避けられないが、冷静に準備すれば安心
親が亡くなった後の預金引き出しには、戸籍や印鑑証明など煩雑な手続きが必要ですが、適切に準備すれば確実に引き出すことが可能です。
大金を自宅に保管することは避け、相続人全員で話し合いながら、遺言書の作成や銀行との連携を早めに行うことが、将来の安心につながります。
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