1985年(昭和60年)に行われた公的年金制度の大改正は、日本の年金制度における転換点となりました。それまでの制度では職業別に年金制度が縦割りで構成されていたため、不公平感や制度の複雑さが課題となっていました。この記事では、この年金改革で何が変わったのかを詳しく解説しながら、背景や仕組みも含めてわかりやすく紹介します。
基礎年金制度の導入とその目的
この改正で最も大きなポイントとなったのが、「基礎年金制度」の創設です。それまで国民年金は自営業者などの「第1号被保険者」だけを対象とした制度でしたが、改正後は全国民共通の基礎年金として位置づけられました。
つまり、会社員、公務員、専業主婦も含めて全ての人が国民年金(基礎年金)の対象者となり、縦割りだった制度の共通部分(基礎部分)を統合する形がとられたのです。
改正前の問題点と改正の背景
当時の年金制度は、以下のように分かれていました。
- 自営業者や農業者など → 国民年金
- 会社員 → 厚生年金
- 公務員 → 共済年金
それぞれ独自の制度だったため、「年金額に格差がある」「無年金者が多い」「制度が複雑」などの問題が指摘されていました。また、高度経済成長期を経て国民のライフスタイルが多様化し、制度の見直しが急務となっていたのです。
3つの被保険者区分の創設
改正によって、国民年金に以下の3つの被保険者区分が設けられました。
- 第1号被保険者:自営業者・無職者など
- 第2号被保険者:会社員・公務員など
- 第3号被保険者:第2号被保険者に扶養されている配偶者(主に専業主婦)
これにより、全ての国民が何らかの形で基礎年金に加入することとなり、「国民皆年金」が実現されました。
改正後の仕組み:二階建て構造へ
この改革により、日本の年金制度は「基礎年金+上乗せ年金」という二階建て構造となりました。
例えば会社員であれば、「基礎年金(国民年金)」に加え、「厚生年金」の上乗せがあるという構成になります。公務員も同様に、「基礎年金+共済年金」という形で、制度がより公平かつ合理的になりました。
改革の影響と現在へのつながり
この昭和60年改正は、現在の年金制度の基本的枠組みを形づくったと言えます。基礎年金制度の導入により、国民全員が年金制度の対象者となり、年金制度への信頼性と持続可能性が高まりました。
今もなお、少子高齢化などの社会問題に直面していますが、この改革がなければ、より大きな制度不備を抱えていた可能性があります。
まとめ:昭和60年の年金制度改革の意義とは
昭和60年の年金改革は、次のような重要な意味を持ちます。
- 国民年金を全国民共通の「基礎年金」として再定義
- 会社員や公務員なども国民年金に加入義務が生じた
- 縦割りの年金制度の「基礎部分」が統合された
- 3つの被保険者区分により、制度の明確化と平等性が向上
この改革を理解することは、年金制度全体を知るうえでも非常に重要です。現行制度のベースを築いたこの歴史を、正しく知っておくことが将来設計にもつながるはずです。
コメント