従業員が産休・育休中で給与の支払いがない場合でも、市区町村からは特別徴収による住民税の通知書が届くことがあります。このようなケースでは「給与から天引きできないが、どう処理すればよいか?」と戸惑う事業主の方も多いでしょう。この記事では、給与支給がない期間における特別徴収の対応方法と、必要な手続きについて詳しく解説します。
特別徴収とは?基本的な仕組みをおさらい
特別徴収とは、事業主が従業員の住民税を給与から天引きし、自治体に納付する仕組みです。原則として、従業員を雇っている全ての事業者はこの方法で住民税を徴収・納付する義務があります。
市区町村は毎年6月に「住民税決定通知書(納入書付き)」を送付してきますが、これは6月から翌年5月までの12か月分の住民税を給与から徴収する前提で作成されています。
給与支給がない場合の対応方法
出産や育児休業などにより給与が支給されない場合、「特別徴収」では天引きができないため、別の対応が必要です。対応方法は主に次の2つに分かれます。
- 一時的に普通徴収へ切り替える
- 復職後に未徴収分をまとめて天引きする
どちらの対応が可能かは従業員との話し合いや、自治体の方針によって決まるため、柔軟な対応が求められます。
普通徴収への切り替え手続き
一番確実な方法は、「特別徴収にかかる給与の支払いが停止している」ことを理由に、普通徴収への変更届を市区町村に提出することです。
一般的には、「特別徴収に関する給与支払報告書・異動届出書」に必要事項を記入し、給与の支払いが止まっている旨を明記して提出します。
これにより、その従業員の住民税は本人が直接支払う「普通徴収」に切り替わり、納付書が本人宛に送付されるようになります。
復職後にまとめて徴収する選択肢も
従業員が近い将来復職する予定であれば、事業主が市区町村に「未徴収税額を復職後に分割徴収する旨」を申し出ることも可能です。
この場合、従業員が職場復帰した後、給与支給が再開された時点で数か月分の住民税を分割または一括で天引きすることになります。ただし、給与が少額の場合は負担が大きくなってしまうリスクもあるため、従業員本人とよく相談することが大切です。
市区町村との連携と確認の重要性
住民税の取り扱いは市区町村によって運用が異なるため、通知書が届いたら、必ず自治体の税務担当課へ状況を説明し、指示を仰ぐことが重要です。
特に長期の休業が見込まれる場合や、育児休業が延長される可能性がある場合などは、早めの対応がスムーズな税務処理につながります。
まとめ|給与がない場合は普通徴収への切り替えが基本対応
従業員が出産・育児休業などで給与を受け取っていない期間中に住民税の特別徴収を行うことはできません。このような場合、普通徴収への変更手続きを行うか、復職後に未徴収分を回収するかのいずれかで対応します。
市区町村から通知書が届いたら放置せず、速やかに確認・相談し、適切な対応をとることで、従業員本人の負担軽減にもつながります。事業主としての義務を果たしながら、柔軟で丁寧な対応を心がけましょう。
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