医療事務の現場では、複数の医療受給者証や公費負担制度が関与するケースにおいて、レセプト記載の判断が非常に複雑になることがあります。特に、人工透析患者で複数の公費を併用している場合、「一部負担金額」や「公費の一部負担金額」欄の記載に迷うことも多いでしょう。本記事では、国民健康保険・特定疾病・福祉医療などが関係するレセプト記載について、具体的に解説します。
事例の概要と整理
以下のようなケースを例に、記載方法を整理します。
- 患者:65歳、国民健康保険加入者
- 人工透析を受けており、特定疾病療養受療証(上限1万円)を所持
- 加えて、県独自の福祉医療証(自己負担なし)も所持
- 特記欄:「02長」、給付割合:「7割」
- 総点数:185,000点(医療費換算18万5000円)
「一部負担金額」欄の記載:どう書くべきか?
この場合、特定疾病療養受療証の限度額により、自己負担は原則として1万円となります。しかし、福祉医療(自己負担なし)も併用しているため、最終的な窓口負担はゼロです。
このため「一部負担金額」欄には「10,000円」と記載し、公費により負担されることを明示する必要があります。これは、特定疾病による負担額が1万円であることを正しく示すためです。
「公費の一部負担金額」欄の記載:記入すべきか?
福祉医療によりこの1万円が免除される場合、「公費の一部負担金額」欄に「10,000円」と記載します。これは、実際に患者が支払わなかった金額をどの公費が補填したかを明確にするためです。
この記載により、自治体が福祉医療の対象として処理すべき金額が明示され、正しい請求・審査が可能になります。
記載の流れと例示
このようなケースでは、以下のような記載が適切です。
- 給付割合:「7」
- 特記欄:「02長」
- 一部負担金額:「10,000」円
- 公費の一部負担金額:「10,000」円
公費欄に「10,000円」と記載することで、この金額が県の福祉制度により補填されることを正確に表現できます。
注意点と審査対応
一部の審査機関では、給付割合や特記事項と実際の請求金額が一致していない場合に返戻・査定対象になることがあります。そのため、特定疾病・公費・給付割合の相互関係を意識して整合性の取れた記載が必要です。
記載ミスを防ぐためにも、電子レセプトシステムでのチェック設定や、定型コメントの活用が推奨されます。
まとめ:透析患者のレセプトは制度理解と丁寧な記載が鍵
人工透析を受けている国保患者で、複数の受給者証を持っている場合、一部負担金額と公費負担額の記載は極めて重要です。制度の上限金額や補助制度の役割を理解し、それを正確にレセプトに反映させることが、スムーズな審査と返戻防止につながります。
特定疾病と福祉医療の併用は頻出の事例ですので、基本パターンとして身につけておくとよいでしょう。
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