60歳を迎えた今、これまで厚生年金に15年間加入していたことに対して「このままで良かったのだろうか?」と疑問を持つ方もいるかもしれません。厚生年金は長期間加入するほど将来の年金受給額が増える仕組みですが、15年という期間でも意味があるのか、また現在加入を続けるべきなのか、具体的に解説していきます。
厚生年金に15年加入している場合の基本
2025年現在、厚生年金の受給資格を得るためには原則として10年以上の保険料納付期間が必要です。したがって、15年の加入実績があれば、すでに将来の年金受給権を確保していることになります。
厚生年金に加入していた期間は、その分の報酬比例部分(報酬額と加入月数に基づいて算出される部分)の受給権が積み上がっているため、国民年金(基礎年金)のみよりも受給額が高くなる仕組みです。
60歳時点で厚生年金に加入するメリット
60歳以降でも就業を継続すれば、厚生年金に引き続き加入することが可能です。その場合、以下のようなメリットがあります。
- ① 年金額がさらに増加する:報酬比例部分は加入月数と給与額に応じて加算されるため、60歳以降も働けば将来の年金受給額は増加します。
- ② 在職老齢年金の対象となる可能性:65歳前に年金を一部受け取りながら働くという制度の恩恵を受けられます。
- ③ 社会保険の継続による医療保険・障害年金の保障:引き続き保険給付の対象となる安心感があります。
特に年金額を少しでも増やしたいという方にとって、60歳以降の厚生年金加入は有利といえるでしょう。
厚生年金加入のデメリットはあるのか?
一方で、60歳以降の厚生年金加入には次のような注意点もあります。
- ① 手取りが減る:保険料の自己負担分(標準報酬月額の約9.15%)が給与から天引きされるため、手取りが減少します。
- ② 老齢厚生年金の一部が停止される可能性:在職老齢年金の制度により、一定の収入を超えると年金の一部または全部が支給停止になることもあります。
- ③ 短期間では保険料負担がリターンを上回る可能性:65歳までの短期間しか働かない場合、支払った保険料に対して受給額の増加が相対的に少ないことも。
これらを踏まえ、働く目的や給与水準に応じて加入継続の是非を判断する必要があります。
老齢厚生年金の受給開始と計算例
老齢厚生年金は、原則65歳から支給開始されますが、60歳以降の働き方や在職中の報酬額によって支給内容に変化が生じます。
たとえば、月収30万円で15年間厚生年金に加入していた場合、概算で月額3〜4万円の報酬比例部分が加算されるイメージです。そこに基礎年金(満額で月約6.6万円)を加えると、合計で約10万円程度の年金が見込まれます(納付期間や加入歴により大きく異なります)。
実例:厚生年金15年加入後に60歳を迎えた方の選択
Bさん(60歳・女性)は、厚生年金に15年加入した後、定年退職。その後はパートで週20時間未満の勤務に変更し、厚生年金の再加入を避けて手取り重視で生活しています。一方で、配偶者の扶養に入らず働くAさん(男性)は、60歳から65歳まで厚生年金に再加入し、年金額を増やす選択をしました。
このように、どちらの選択にも合理的な理由があり、「働き方」「収入」「将来の生活設計」によって選ぶべき方向性は異なります。
まとめ:15年の厚生年金加入は意味がある。60歳以降の選択肢も多様に
15年間の厚生年金加入は、すでに老齢年金の受給資格を満たしており、十分に意味のあるものです。60歳を迎えた今、厚生年金の継続加入には年金額の上乗せや保障の継続といったメリットもありますが、保険料負担や支給停止リスクといったデメリットも存在します。
大切なのは、ご自身の収入状況や今後の働き方を見据えて、年金額だけでなく手取りや保障内容まで含めて総合的に判断することです。必要に応じて年金事務所やファイナンシャルプランナーに相談するのもおすすめです。
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