2025年の年金制度改正は、65歳以上の年金受給者にとって重要な転換点となります。特に、在職老齢年金制度の見直しや基礎年金の底上げ策など、働く高齢者や将来の受給者に影響を与える内容が含まれています。本記事では、これらの改正点が具体的にどのような影響を及ぼすのかを解説します。
在職老齢年金制度の見直し
従来、65歳以上の年金受給者が働いて収入を得ると、年金額が減額される「在職老齢年金制度」が適用されていました。しかし、2026年4月からは、この減額基準額が月50万円から62万円に引き上げられます。これにより、年金と給与の合計が62万円を下回る限り、年金が減額されることはなくなります。
例えば、月収が40万円で年金が20万円の場合、合計60万円となり、減額の対象外となります。この改正は、高齢者の就労意欲を高めるとともに、労働力不足の解消にも寄与すると期待されています。
基礎年金の底上げ策
現在、基礎年金の給付水準は将来的に低下する可能性が指摘されています。これに対応するため、厚生年金の積立金を活用して基礎年金を底上げする案が検討されています。具体的には、2029年の次回財政検証で基礎年金の給付水準の低下が見込まれる場合に、底上げ策を実施することが法案の付則に明記されました。
この措置により、将来的に基礎年金の給付水準が安定し、特に国民年金のみを受給する人々の生活の安定が図られることが期待されています。
年金額の引き上げ
2025年度の年金額は、法律の規定により原則1.9%の引き上げとなります。具体的には、国民年金(老齢基礎年金・満額)は月額69,308円、厚生年金(夫婦2人分の老齢基礎年金を含む標準的な年金額)は月額232,784円となります。
この引き上げは、物価の変動や賃金の上昇に対応するものであり、年金受給者の生活水準の維持を目的としています。
高所得者への影響
厚生年金の保険料や将来の年金額を算出する際に用いられる「標準報酬月額」の上限が、段階的に引き上げられることが決定されています。2027年9月には68万円、2028年9月には71万円、2029年9月には75万円となる予定です。
これにより、高所得者は保険料の負担が増加しますが、その分将来受け取れる厚生年金額も増えることになります。また、制度全体の収支バランスが改善され、中・低所得層にも恩恵が及ぶとされています。
まとめ
2025年の年金制度改正は、65歳以上の年金受給者にとって重要な変化をもたらします。在職老齢年金制度の見直しにより、働きながら年金を受け取ることが容易になり、基礎年金の底上げ策や年金額の引き上げにより、将来的な生活の安定が期待されます。高所得者への影響もありますが、制度全体の持続性を高めるための措置といえるでしょう。今後の動向に注目し、適切な対応を検討することが重要です。
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