傷病手当金の受給には、原則として「就労していないこと」「労務不能であること」が要件になります。そのため、副業収入があると受給に影響が出る可能性があります。今回は、レンタルルーム経営などの不労所得がある場合に、どのように取り扱われるのか、そして受給への影響を避けるには何が必要なのかを詳しく解説します。
傷病手当金の基本的な受給条件とは
傷病手当金は、健康保険加入者が病気やけがで働けなくなった際に支給される給付金です。受給には以下の4つの条件を満たす必要があります。
- 業務外の傷病による労務不能
- 連続して3日以上仕事を休む
- 休業4日目以降も労務不能が続いている
- その期間に給与の支払いがない(または一部)
「労務不能かどうか」は医師の判断に基づきますが、副業や事業所得がある場合は「実際に働いていないかどうか」が問われることになります。
レンタルルーム経営は副業に該当する?
レンタルルームは不動産収入に分類されるケースが多いですが、事業形態や作業実態によっては「事業所得」扱いとなり、労務提供と見なされる可能性があります。特に、経営や管理に本人が関与していると判断されれば、就労と見なされることがあります。
たとえ収入が家族に入っていても、税務上または名義上で本人が関与している場合、保険者は「働いている」と判断する可能性があります。
名義変更は必要?何をすべきか
傷病手当金の受給を適切に行うためには、経営・収入の実態が本人に属していないことを明確にすることが重要です。そのためには以下のような対応が推奨されます。
- 収入口座を完全に家族名義にする
- 確定申告で収入者を家族にする
- 賃貸契約や開業届を家族名義にする
- 事業用のWebサイトや連絡先を家族のものにする
必要に応じて税理士に相談し、形式上だけでなく実態面でも経営権を移すことが望ましいです。名義変更までは必要ないケースもありますが、少なくとも実質的に関与していないことを第三者が見ても明らかにする措置が必要です。
家族が実際に経営していることの証明
実際の経営を家族が行っている場合、その証拠として以下のような資料を用意しておくと安心です。
- 通帳の名義と収入の振込記録
- 開業届や確定申告書類の名義
- 業務マニュアルや鍵管理記録などの業務履歴
- 外部業者とのやりとりメールの送受信者が家族であること
こうした実態証拠があることで、傷病手当金の審査担当者に対して本人が労務提供していないことを客観的に説明できます。
収入があっても受給できるケースもある
実は副業収入があるからといって、すぐに傷病手当金の受給資格が失われるわけではありません。判断されるのは「労務不能かどうか」であり、単に収入があるだけではNGとはなりません。
ただし、医師が労務可能と判断したり、本人が管理業務などに関与している証拠が出ると、支給が停止される可能性がありますので慎重な対応が必要です。
まとめ:実態の切り分けと記録が重要
レンタルルーム経営などの副業がある場合でも、傷病手当金の受給を阻害しないためには、名義・実態・記録の明確な切り分けがカギとなります。
家族に実際の経営を任せる場合でも、それを裏付ける書類や記録がなければ、保険者は疑念を持つ可能性があります。必要に応じて社会保険労務士や税理士に相談し、確実な対応を取ることが大切です。
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